キーワード

ワーク・イニシアチブ

一人ひとりが自分の働く意味や想いを発見し、日常の仕事の中で育むことで、自らのキャリアを高めていくことが大切です。ヒューマンバリューでは、自らの想いに基づいて日常の仕事に取り組み、自分自身で未来を創り出していく働き方や生き方のことを「ワーク・イニシアチブ」と呼んでいます。

ワーク・イニシアチブが実践されている状態とは…

ワーク・イニシアチブを実践している人は、次のような状態を実現しようとしている人です。

・仕事に取り組む上で大切にしたい想いや価値を見つけ、日々の仕事の中でそれを実践している
・不確実な状況や困難な状況にあっても、すべてのことを機会と捉え、未来に生かしている
・自分の生き方や行動を自分の想いや大切にしたい価値に照らして、日々振り返っている
・過去にとらわれるのでもなく、また未来ばかりを見るのでもない。いまの仕事にコミットする
 ことで、実現したい姿に向けて主体的に取り組んでいる
・周囲との相互作用によって、お互いの大切にしたい想いや価値を育んでいる
・自己成長のスピードを加速させ、高い成果を生み出している

ワーク・イニシアチブが求められる背景

現在の企業にとって、「社員1人ひとりの働きがいの向上」が大きな課題となっています。具体的には、「メンバーがやらされ感に陥っている」「組織のビジョンやバリューが浸透しておらず、仕事や組織へのコミットメントが低下している」といった声がよく聞かれます。

しかし、こうした課題への対応をマネジャーやリーダー、人事など一部の人の役割と捉えるだけでは解決することはできません。組織にいるすべての人が、働く意味やありたい姿を描いていくことで、仕事に対するコミットを生み出すことが必要です。

そのために、1人ひとりが現状の自分をしっかり振り返り、自己理解を深めることも大切ですが、それが日々の仕事とつながっていないと、本当の意味での持続的なモチベーションや働きがいの向上にはつながりません。たとえば、ツールや研修などを通じて「自分の強みやタイプ」「実現したいビジョン」「仕事の適性」といったことを断片的・静態的に捉えても、本当の意味での働きがいやモチベーションの向上にはつながりづらいものです。

そこで、ヒューマンバリューでは、「働く意味や想いは、日常の仕事の中で育む(動態的なプロセスによって実現する)」という考え方に基づく「ワーク・イニシアチブ」を開発しました。

ワーク・イニシアチブのキーコンセプト

ワーク・イニシアチブを実現するには、仕事(ワーク)と人の心に「ベルトがかかる」ことが大切です。ベルトがかかるという状態やそこに至るプロセスを表したのが、「ベルトモデル」です。

ベルトをかけるには、「セカンドセルフ」を育むとともに、それを促進させる「ワーク・イニシアチブ行動」を高めていくことが重要です。

セカンドセルフを育む

セカンドセルフは、人から与えられるものではなく、自分で主体的に見つけるものです。ただし、座右の銘のようなフレーズや自分が大切にしている理念、思想のキーワードなどのように、明確な形があるものとは限りません。セカンドセルフは、その人の固有の体験や環境から形成されるものです。それは、その人がこれまでの生きてきた体験や、今後生み出していきたい未来像に関連する物語の中に位置づけられるものであり、そこに流れている文脈のようなものです。たとえば、自分が小さいときから大切にしていたことや影響を受けて変化してきた過程を考える、自分が働きがいを感じた体験を振り返る、実現したい姿を話し合うといったプロセスを通じて、徐々に輪郭が明らかになってくるものでしょう。

また、セカンドセルフは自己完結された世界で育つものではなく、周囲や環境との相互作用によって育まれるものです。

たとえば、自分では大切ではないと考えていた価値観も、それを大切にしている人の話を聞くと、自分にもそれが大切だと感じる場合があります。人間は、自分のことをすべて理解しているとは言い切れません。周囲の話を聞いたり、周囲の人に対する理解を深めることで、それを自分に投影し、あらためて自己理解を図ることができます。

また、セカンドセルフは過去の体験をヒントに文脈で捉えることが大切ですが、単に過去の話を思い出しているだけでは、自分にとっての大切な想いや価値観を見つけるのは難しいかもしれせん。そこで、ヒントを得るために、ワーク・イニシアチブの実現につながるセカンドセルフについて8つの種類を設定しています。

セカンドセルフの種類

この8つをヒントに、自分が大切にしている想いや価値観に関連する自分自身の出来事やストーリーを振り返ることで、自分の大切にしているセカンドセルフを見つけるヒントとなります。つまり、分類するための種類ではなく、自分の大切なものを考え、異なる視点から自分を振り返るために8つの種類を活用します。現在は小さなセカンドセルフでも、自分にとっての意味や重要性を実感できれば、そのセカンドセルフを育てていくことが可能になります。

※セカンドセルフの8種類は、ヒューマンバリューが実施した「2011年会社員1000人の働く意味調査」にご回答いただいた1032人のデータを解析し、因子分析により抽出したものです

セカンドセルフを育むことの効果

セカンドセルフを育むことで、以下のような効果を得ることができます。

・セカンドセルフを探求することによって、日々の仕事の意味づけが明確になる
・現在の仕事と自分の目指したいキャリアとのつながりが明確になり、実感をもちながら自分の
 キャリア形成に取り組める
・セカンドセルフの自己理解を深めることが他者理解を深めることにつながり、周囲とのより良い
 関係を構築できる
・マネジャーにとっては、自分らしいマネジメントやリーダーシップのあり方を探求する
 機会となる

ワーク・イニシアチブ行動を高める

仕事(ワーク)と心にベルトをかけ、セカンドセルフを育むための行動がワーク・イニシアチブ行動です。ワーク・イニシアチブを実現するには、自らのワーク・イニシアチブ行動を振り返り、今後高めていきたい行動についての検討を行います。ワーク・イニシアチブ行動として、10種類の行動を定めています。

ワーク・イニシアチブ行動の種類

自己検討の中から、自分の中の思考の枠組みを捉え直し、あらためて大切な行動を再確認することは、相当の困難が予想されます。ここで大切なのは、自分自身のワーク・イニシアチブ行動の高低を振り返ることではなく、自分にとって、自分のセカンドセルフを育むために高めたい行動は何かを検討することです。

また、こうした検討を行う際に大切になるのは、周囲との相互作用、相互理解のプロセスです。たとえば、ワーク・イニシアチブ行動の中で、自分があまり高くない行動についても、高い人が実践しているストーリーを聞けば、ワーク・イニシアチブ行動を高めるヒントを得ることができる場合もあります。また、自分には重要さに対する認識が欠けていただけであり、その重要性を十分に認識できれば、明日からでもすぐに実行できる場合もあるでしょう。また、現時点では高める必要のないワーク・イニシアチブ行動も認識できるでしょう。

相互理解・信頼に基づく相互検討というプロセスを取ることによって、たりないところを補うという改善ではなく、自分自身を認め、自分の想いや価値を大切にした上での改善に踏み出しやすくなります。

※ワーク・イニシアチブ行動の10種類は、自らの未来を主体的に切り拓いたり、キャリアを形成している人の思考・行動パターンからアンケート調査設問を設定し、「2011年会社員1000人の働く意味調査」にご回答いただいた1032人のデータを解析を行い、因子分析により抽出したものです。

ワーク・イニシアチブ行動を検討することの効果

ワーク・イニシアチブ行動の検討を通して、以下のような効果を得ることができます。

・自らの現状のワーク・イニシアチブ行動を理解することで、自分の強みやさらに高めていきた
 い行動が認識できる
・自分のセカンドセルフに合ったワーク・イニシアチブ行動を高めることで、働きがいを高める
 ことができる
・マネジャーにとっては、セカンドセルフとワーク・イニシアチブ行動についての理解を深める
 ことによって、メンバーの強みを理解し、メンバーに対するモチベーション向上や効果的な
 マネジメントの実践に役立てることができる

関連するレポート

実践者から学ぶDAO(Decentralized Autonomous Organization)型組織

2022.11.11インサイトレポート

株式会社ヒューマンバリュー プロセスガーデナー
清成勇一

2022年に入ってから、一般のニュースなどのメディアにおいても、Web3やNFT、メタバース、DAOというキーワードをよく耳にするようになりました。筆者は、「自律分散型組織」について調査・研究を進める中で、数年前から、DAO(ダオ)に着目していました。DAOとは「Decentralized Autonomous Organization」の略称で、日本語では「自律分散型組織」を意味します。このDAOは、中央集権ではなく、ブロックチェーンの技術を活用して自律的に情報を管理し、不特定多数がネットワーク上でつながりながら、目的の実現に向けて運営される組織体系を指します。海外での事例が多い中、日本国内でも実践している方の声を聞きたいという想いからリサーチしていたところ、この分野の第一線で実践されている岡 崇(おかたかし)さんとのご縁をいただきました。2018年11月に、社内の研究会にて、ブロックチェーンとDAOに関するトレンドや海外事例などをご紹介いただきながら、対話をする機会をもつことができました。そして、2022年に入り、Web3やメタバースなど国内でも注目が高まりつつある中で、あらためて、岡 崇さんに約4年間の実践を踏まえて、DAOの世界観や最新事例について、アジャイルODx研究会の会合で講演をいただきました。今回の会合の目的は以下の通りです。

・web3.0、DAO、メタバース、NFTなどのテクノロジーの最先端に触れる機会を通して、生物圏・人間圏・地球圏にいま加わった「バーチャル空間」の新たな可能性・あり方を探求するきっかけとなっている。

・DAOやweb3.0によって、人・組織のあり方にどのような変化がもたらされるのか。そこに向けて、私たちは何を受け入れ、手放し、そして何を大切にしながら歩む必要があるのか。対話する中で、そのポイントが浮かび上がっている。

・メタバースの世界に対応するための、心と身体の準備ができ、そこに向けて一歩歩めるようになっている。

本記事は、第1部で、アジャイルODx研究会での岡 崇さんの講演のサマリーや参加者の皆さんとのダイアログを紹介し、第2部では、私たちヒューマンバリューメンバーで対話したDAOと人・組織に関わる考察を共有いたします。

組織にアジャイルを獲得する〜今、求められるエージェンシー〜

2022.01.20組織開発

プロセス・ガーデナー 高橋尚子

激変する外部環境の中で、SDGsへの対応、イノベーション、生産性の向上などの山積するテーマを推進していくには、組織のメンバーの自律的取り組みが欠かせません。そういった背景から、メンバーの主体性を高めるにはどうしたら良いのかといった声がよく聞かれます。この課題に対し、最近、社会学や哲学、教育の分野で取り上げられている「エージェンシー」という概念が、取り組みを検討する上での参考になるのではないかと思います。本レポートでは、「エージェンシー」の概念と、それを醸成する観点を紹介します。

誰の組織?-公共哲学における集合的意思決定

2021.12.17組織開発

アジャイル組織開発とは何か

2021.10.25組織開発

株式会社ヒューマンバリュー 会長
高間邦男

ソフトウエア開発の手法として実績をあげてきたアジャイルの考え方は、一般の企業組織にも適応可能で高い成果を期待できるところから、最近では企業内の様々なプロジェクトにアジャイルを取り入れる試みが見られるようになってきました。また、いくつかの企業では企業全体をアジャイル組織に変革させるという取り組みが始まっています。本稿ではこういったアジャイルな振る舞いを組織に取り入れていくための様々なアプローチを整理してみたいと思います。

アジャイルな組織づくりとITインフラ課題

2021.10.11組織開発

自律分散型組織のさまざまなモデル

2021.09.24組織開発

プロセスガーデナー 清成勇一

次世代の組織運営として、自律分散型・自己組織化・アジャイルなどのエッセンスを取り入れた組織形態・運営が、全世界で今なお進化し続けています。

筆者は、学生時代に「学習する組織」という理論に出会い、そこに管理・コントロールを主体とした組織運営ではなく、一人ひとりの主体性と情熱が発揮される組織運営の可能性を感じ、学習する組織づくりを実践しているヒューマンバリュー社に入社しました。仕事に携わる中で、「自己組織化」というキーワードに触れ、「組織の中で、どのようにして自己組織化を実現するのか?」という問いを持ちながら、「自律分散型組織」を調査・研究し始めました。

本テーマは、「自律分散型組織のさまざまなモデル」です。筆者の探求の旅路の中で出会ったモデル、得られた気づきやインサイトを紹介することで、「自律分散型組織とは何か?」「運営する上では何が大切なのか?」などについて関心をお持ちの方が、自律分散型組織の概要を知る一助となれば幸いです。

不確実な時代において、なぜ自律分散型組織が効果的なのか?

2021.07.19組織開発

自律分散型組織については、1990年初頭に登場した「学習する組織」の中で、その必要性や有用性が語られて以降、変革の機運が高まり、様々なプラクティスが生まれてきました。一方、多くの企業は未だに中央集権的なマネジメント構造に基づいた組織運営から脱却することの難しさに直面しているものと思います。しかしながら、COVID-19の世界的なパンデミックをはじめ、社会的な文脈が大きく変わっていく流れの中で、これからの時代に即した組織運営の変革に取り組むことは、いよいよ待ったなしとなってきました。そこで、あらためまして、このタイミングで、不確実な時代において自律分散型組織を創っていくことの効果やその本質について考えてみたいと思います。

Performance Management Conference 2020 参加報告 〜コロナ渦で加速したアジャイルなパフォーマンスマネジメントの取り組みと共感的なコミュニケーション〜

2021.05.07海外カンファレンス報告

米国のシンクタンクConference Board が毎年開催している Performance Management Conference が、コロナ禍の2020年11月7日と12月9日の2日間、オンラインのバーチャルセッションという形式で開催されました。

本カンファレンスでは、彼らのリサーチによるパフォーマンス・マネジメントの最新トレンドについての紹介と、それらに関連するビジネスの現場での取り組みについての研究や事例が、毎年紹介されます。ヒューマンバリューでは2017年から毎年参加しており、今回で4回目の参加になりました。今回のカンファレンスの参加者は425人で、例年の4〜5倍の参加者数でした。新型コロナによって、激しいビジネス環境の変化に見舞われた2020年。米国においても、人々の働き方に変化が迫まれ、パフォーマンス・マネジメントのあり方に大きな注目が集まっていることが、参加者の増加からも伺えました。

自律分散型の文化を育む上での阻害要因に向き合う

2020.10.07組織開発

いま多くの組織がアジャイルな振る舞いを組織に取り入れ、自律分散型組織を育んでいくことを求めるようになっています。ヒューマンバリューでは、2018年より計画統制型の組織構造の中にアジャイルな振る舞いを取り入れていく、チームマネジメント手法「チームステアリング」を開発してきました。​今回は、計画統制型組織において自立分散型組織の振る舞いを導入しようとした際に起きがちな阻害要因と、阻害要因に向き合いながら、自律分散型の組織文化を育むためのポイントをご紹介します。

ATD2017概要

2017.06.02ATD(The Association for Talent Development)

2017年のATDインターナショナルカンファレンス&エキスポは、5月21日(日)~5月24日(水)の日程で、米国ジョージア州アトランタのジョージア・ワールド・コングレスセンターにて開催されました。

もっと見る