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【2018 Performance Management Conference】1日目速報レポート

本日から、ニューヨークで開催されている 2018 Performance Management Conferenceに参加しています。まずは速報として、初日の様子を、3つの基調講演を中心にご紹介します。

カンファレンスの概要

Conference Boardというシンクタンクの団体が主催している​もので、主にパフォーマンス・マネジメントとそれらに関連する取り組みについての研究や事例が紹介されています。今回のカンファレンスの参加者は135人となり、アメリカからの参加者が中心でしたが、海外からはカナダ、カタール、イスラエルの参加者がいたようです。日本からは、ヒューマンバリューのメンバーのみの参加となりました。

PDRI社 Elaine Pulakos氏

基調講演の一つめは、コンサルティングの会社であるPDRI社のElaine Pulakos氏でした。彼女は、変化の激しい時代に組織が生き残っていくためには、ARA(Adaptability、Resilience、Agility)が重要であると主張しています。ARAを体現し、高いパフォーマンスを生み出す組織を目指して、近年パフォーマンス・マネジメントに取り組む企業が増えていますが、未だ十分な効果を得られていないのが、フィードバックをするマネジャーのスキルについてであると言います。

Pulakos氏によると、組織がフラット化し、マネジャーが担当する組織のスコープが広くなり、オートメーションが進む中で、今後マネジャーがメンバーの行動を観察し、頻繁なフィードバックを行うのは不可能である。メンバーがより自チームで起きている課題や考え方の違いに気づき、自分たちで解決できるよう、互いにフィードバックを与え合うカルチャーをつくっていくことが大切であるという主張でした。これまでのパフォーマンス・マネジメントは、個人へのフィードバックを主軸に置いていましたが、今日のビジネス環境では、よりチームに対するパフォーマンス・マネジメントに注目し、フィードバック・カルチャーをつくっていくことなどが述べられていました。

Cisco社の事例

基調講演二つめは、Cisco社の事例です。彼らの取り組みで印象的だったのは、HRの異なるファンクションの目線合わせを行なったことです。取り組みが始まる前に、HRの各ファンクション(報酬、トレーニング、制度等)のリーダーが集まり、大切にしたいフィロソフィーや目的、「タレント」「パフォーマンス」とは何を指すのかについて、ダイアログを行ない、2ヶ月かけて共通の認識を持つことから始めたそうです。

ただし、レーティングをなくしたからと言っても、マネジャーには意思決定(異動・報酬・昇進等)をする義務が残っています。そのため、パフォーマンス・マネジメントをすることではなくて、意思決定をするために必要な情報として、メンバーとのチェックインの内容であったり、エンゲージメントのパルスサーベイを使い、データを集めたそうです。結果として、そのデータはマネジャーの意思決定をより正確にし、リーダーが変わったときにも、情報として役立ったそうです。ただし、今でもCisco社内では、現在のやり方が最終型ではなく、今後もより良いやり方を模索中していく予定だと言っていました。自分たちにとって絶対手放せないバリューを決め、それ以外はすべて捨ててもいいという覚悟で変わっていくつもりだそうです。

York社の事例

三つめの基調講演は、York社という大きなグループ会社の事例です。登壇者のDanielle McMahan氏が入社した当時は、Yorkグループは、40社の買収を経験し、多様な組織の集まりでした。ただし、多様すぎるため、従業員もお客様も一体Yorkは何者なのか、よくわからなくなっていました。それを改善すべく、グループ内でのカルチャーの統一を図るために、York Wayというコアバリューを作り、それらを中心に、パフォーマンス・マネジメントを変えることにしました。

York社の事例で興味深かったのは、パフォーマンス・マネジメントの様々な施策を一気に始めるのではなく、レコグニションから取り組み始めたというところです。ここでは、PROPSというアプリを使って、メンバー同士がYork Wayに沿ったレコグニションができるよう促したそうです。


以上が1日目の速報レポートになります。明日が最終日ですが、また2日目のレポートも楽しみにしていただけたらと思います。​(高柳・佐野)

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