個人と組織のグロース・マインドセットを育む「みらい共創ミーティング」(外資系企業G社の取り組み)
外資系G社のサプライチェーンでは、個人と組織のマインドセットを獲得する「みらい共創」に取り組んだ。 約半年間の取り組みで、現場は「明るく、仲が良く、居心地が良い」雰囲気から、「信頼し合い、一体感をもって、何が起きても意味を見出し、協働しながらチャレンジし、価値を共創できる風土」が生まれた。こうした取り組みを、経営陣が「組織全体のカルチャー・チェンジの取り組みだ」と認識し、全社的な取り組みへと拡大した。
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背景 / プロジェクトの始まり
不安定な状況の中、高めたいのは未来を創造する個人と組織のマインドセット
輸入・製造・販売を行う外資系企業G社のサプライチェーンは、当時、自分たちの業務の海外移管の可能性があったり、取り扱い製品に変化が起こる等、未来が不確実な中にいた。そうした状況の中で、組織で働く一人ひとりにとって大切なことは、不安な気持ちに流されることなく、目の前の仕事で価値を生み出し続けたり、たとえ将来、担当している業務が海外へ移管することになったとしても、この職場での経験が糧となり、新たなチャレンジにおいても、グロース・マインドセットで、主体的に成長できる力を高めることだ。
G社の人事やサプライチェーンのマネジャーは、ぜひこうした力を高めていきたいとの願いをもち、ヒューマンバリューに問い合わせた。そして、一人ひとりが「変化」を自らの「成長機会」として捉え、主体的にチャレンジし、強い個人・組織となれるような、マインドセットと行動を獲得する「みらい共創ミーティング」に取り組むことになった。
プロジェクトの推進
マインドセットを育む大切さやポイントを学ぶ、半日の「マネジャー・リーダーセッション」
まずは、マネジャーとリーダーが半日集まり、セッションを行った。
そこでは、世の中の変化の激しさ、そうした変化の中で成果を生み出し続けるために必要となる個人や組織のマインドセット、また、そうしたマインドセットを育むチームの状態についての理解を深めた。さらに、自分のチームで約半年かけて推進する「みらい共創ミーティング」の進め方について検討した。セッションの最後に行ったチェックアウトでの参加者の気持ちは、これからチームで進めていく「みらい共創ミーティング」の取り組みに対する不安と期待が入り混じったものだったが、まずは取り組んでみようということになった。
実践と振り返りを繰り返し、体験を通じて学ぶ、現場での「みらい共創ミーティング」
その後、各現場で「みらい共創ミーティング」と実践が行われた。
「みらい共創ミーティング」は、毎回、個人や組織のマインドセットを育むためのポイントとなる考え方を学び、最後は、次回のミーティングまでの自分とチームのアクションを設定する、90分間のミーティングである。次回のミーティングの冒頭では、実践したアクションから生み出されたポジティブな変化に着目する、ポジティブ・アプローチによる振り返りを行う。こうした取り組みを月1回、全部で4回実施した。
さらに、1回目と4回目のミーティングでは、「組織変革プロセス指標:Ocapi」というアンケートツールを使い、チームの状態を「関係の質」「思考の質」「行動の質」から数値で見える化し、チームの状態や成長を確認した。
こうした、アクションプラン・実践・振り返りの試行錯誤をチームで繰り返していく営みを通じて、起きた変化のポジティブな側面に着目しつつ、皆で協力し合ってアジャイルに取り組むことの大切さを体感しながら学んでいく。この体験が、個人と組織の、未来を創造するマインドセットの獲得につながっていった。
現場で起きた変化を捉え、できるサポートを探求し、組織全体の変化を促す「事務局ミーティング」
現場での「みらい共創」の取り組みが行われるのに並行し、ヒューマンバリューと事務局とでは、何度か事務局ミーティングを行った。ここでは、現場で起きている変化を共有し合い、それらを促進できるサポートを皆で探求し、サプライチェーン全体の変化を加速させていった。
取り組みを始める直前に、本社でシステムトラブルがあり、業務遂行に1か月以上障害が出たが、あえて、みらい共創を開始し、予定通りに進めた。チームとして目の前の困難を乗り越えて行く上でもみらい共創が役立ち、また、社員はグロース・マインドセットの重要性、必要性を肌で感じ、結果として、関係、思考、行動の質が大きく向上した。
生み出された成果 / その後の展開
サプライチェーン全体の思考や行動の質の変化
最後の事務局ミーティングでは、チームの状態を数値化により把握する「組織変革プロセス指標:Ocapi」について、チーム単位で実施された複数のレポートを統合し、サプライチェーンの組織全体の状況を確認した。Ocapi は、「みらい共創ミーティング」の取り組みの中で最初と最後の2回実施されており、これらの2つをそれぞれ統合してみた。
その結果、2回目のOcapi は、1回目より大きく数値が上昇しており、組織全体の関係、思考、行動の質や、人々のエンゲージメントが高まっていることが明らかになった。さらに、1回目のOcapiからは、組織全体が「職場は明るく、お互い仲が良く、居心地が良い」雰囲気であることが見て取れたが、2回目の結果からは、そういった状態を超えて、
「お互いが信頼し合い、一体感をもって、何が起きても自分たちで意味を見出し、主体的に協働しながらチャレンジし、価値を共創できる風土」
が生まれたことが捉えられた。
サプライチェーンの取り組みが、全社展開へと拡大した
全社の経営会議の場で、こうしたサプライチェーンの進化と成果が大きな注目を集めた。そこで、取り組みの内容や成果を経営陣と共有することになった。その結果、経営陣が、「これは組織全体の思考や行動を変えること、つまりカルチャー・チェンジの取り組みである」と認識し、全社に拡大することが決定した。さらに、カルチャー・チェンジであることから、現場だけではなく、経営陣や部長陣も自ら取り組む必要があると感じ、階層ごとにチームを組み、現場と並行し、まさに全社で「みらい共創ミーティング」を推進している。