未来共創オープンラボ・ウィーク2020を振り返って
〜人と組織の未来を拓く問いへの挑戦〜
2020年12月、ヒューマンバリューでは、企業の垣根を超えて人と組織の未来について探求する「未来共創オープンラボ・ウィーク」を初の試みとして開催しました。これは、1週間にわたって計16セッションをオンラインで行うもので、ヒューマンバリューにとって初の試みでした。本レポートでは、このチャレンジに込めた私たちの想いや取り組みをナラティブに振り返ることで、人・組織づくりに携わる方に、この不確実な時代にいかに向き合っていくのかを考えるきっかけにできればと思います。
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はじめに 2020年のヒューマンバリューついての回想
新型コロナウイルスの影響に見舞われた2020年。多くの国が緊急事態を宣言し、経済を支える人の行動が制限されるなど、日々の生活や働き方にとどまらず、基盤になっていた社会の構造が大きく揺らいだ記憶に残る年となりました。そのような中、多くの組織が想定外の事態や変化する環境への適応を模索してきた時間であったように思います。
2020年は、ヒューマンバリューにとっても大きな変化に迫られた1年でした。2月には200名以上お申し込みをいただいていた「パフォーマンス・マネジメント革新フォーラム」の中止を決定し、また20年以上継続していたATDのツアーも、米国の状況が悪化したため中止という判断をしました。しかし、こうした一見わかりやすいイベントについての影響よりも、これまでヒューマンバリューが大事にしてきた対話の場づくりをリアルに行うことが社会的に難しくなったり、リモート中心の働き方に切り替わる中で、オフィスで仲間と同じ時間を過ごすことが極端に減ったことで、当たり前のようにあった仲間とつながる感覚が薄れたように感じられたことのほうが、影響としては実は大きかったかもしれません。
そのような中で、私たち以上に厳しい状況下でもお声掛けくださったクライアントの方々と多くの時間を過ごすことができました。社内においても、リモートワークで不足したコミュニケーションを補うかのように自然発生的な対話の場が次々と生まれたり、新しいテクノロジーを実験的に使ってみるなど、新しい取り組みを通して人と組織がバーチャルな空間でもつながり合えることの手応えを感じることができました。
こうした2020年を振り返ってみると、不確実な世界と向き合い、未来を切り拓く人と組織の関係とはどのようなものか、自分たちも変化に身を置きながら社会を見定め、変革に向き合う企業と共に歩み、未来を切り拓くための組織変革のテーマ、技術、アプローチを探求することで、学び、成長することができた一年だったように思います。
未知の経験に否応なく向き合い続ける必要がある中でも、不安や恐れに支配されず、価値を生み出し続ける存在であるためには、人と組織の関係性を耕し、何が起こっても前を向けるような組織の信頼を高めることが大事であること、不確実な時代だからこそ協力という組織の力を解放し、皆で知恵を出し合い、共に未来を切り拓いていくことの大切さを実感する一年でもありました。
オープンラボを開催しようと思った想い、大事にしたこと
今回、オープンラボ・ウィークというアイデアが生まれたのは、自然の流れだったかもしれません。過去数年、これまで見受けられなかったような新しい取り組みが、ヒューマンバリューのメンバーから生まれていました。必要は発明の母と言われますが、それぞれがこの状況を自分事として受け止め、何か一歩踏み出していた2020年。その総集編として、自分たちの気づきや探求してきたことを共有する場をつくりたいという想いが自然な形となったのが、「人と組織の未来を拓く問い」を掲げ、参加者の皆さまと共に対話を行う「オープンラボ・ウィーク」が生まれた背景のように思います。
オープンラボを実現するに当たって、ヒューマンバリューで話し合った内容の一部を共有したいと思います。
実現したい価値は・・・
● 価値あるタッチポイントにできるといいな
● これまでお付き合いいただいたお客さまの中には、たまたまコロナの環境下で、今は一緒に仕事できていない人もいる。そういう方々にもクライアント・エクスペリエンスや価値を共有できるといいな
● 今動いていなくても、未来を共にする動きにできるといい
● 誰よりも真剣に向き合っていく中で探求していることを、共に探求する
● HVとしてこれが大事だと、独りよがりで考えているというよりは、誰よりも真剣に向き合っていく中で探求していることって、他の人にも共鳴するところがあるのかなと思っている
大事にしたいことは・・・
● 価値ベースで考える
● お客さまにどんな貢献ができるかを考えていきたい
● イベントありきで考えているわけではない
● HVのメンバーも一緒に学んでいることって大事
● ニーズ調査をしてそれに合ったものを提供していこうというよりは、真剣に向き合う中でどういうテーマを発信したり、好奇心をもって共有していけるかが大事だと思っている
● 好奇心をもってとか楽しみながらっていうスタンスで、その場に参加できるのかって、お客さまと共鳴するって大事かなって。
● 雑多感も1つのコンセプトでもあるのかなと思っている
● HVの中でこんなにいろんなこともやっている
● すごく踏み込んでいることも、浅いこともある
● HVに来たときに、そのまんまだなって思ってもらえる感じがいい
セッションの内容は・・・
● いろんなテーマが並んでいて、ワクワクできる構成になったらいいな
● テーマが大事だな
● このテーマについて話したいという情熱があって開催できるもの
● フォーラムを機に一緒に考えたい
● コンセプトの話でいうと、HVのプログラムを紹介するセッションではない
● HVの紹介ではないと思っていて、文脈みたいなのが大事
● たとえば、「コロナで厳しい状況にある中で、目を向けるってどういうことだろう」というような、コアコンセプトがあって、それに紐づいて話すとか…
「オープンラボ」の企画で生まれた16の問い
そうした対話を経て、ではどんな問いをラボで探求していきたいかについて、皆で出し合い、ウィークの構成を考えました。企画チームの想いと呼応するかのように集まった16の問い(テーマ)。オープンラボ・ウィークの一週間のスケジュールは、すぐにびっしりと埋まってしまいました。
1. 対立から共創へ、未来を拓く人と組織の哲学とは?
2. 不確実な時代において、マネジメントのやり方を変えるとはどういうことか?
3. カルチャー変革と人材育成を実現するサーベイ活用とは?
4. 一つの尺度ではなく、誰もが重要な存在となるD&Iの組織づくりとは?
5. 今、働き方の再考を通して高まる企業価値とは?
6. 枠組みを超えて『すでに起きている未来』から学び、シフトする越境学習とは?
7. リモートワークが当たり前になる中で、人事制度はどのように変われるのか?
8. 働き方や生き方が多様化する中で、人と組織をつなぐものは何か?
9. エンゲージメント・サーベイを活用して、新たな人と組織の関係性を育むには?
10. 今私たちが実現したい成長やキャリアのあり方とは?
11. 今この時代に、「共に生きる」カルチャーを育むには?
12. 不安や諦めと向き合いながら、より良く働くために、いま私たちは何ができるだろうか?
13. アジャイルな振る舞いを組織に取り入れるには?
14. 変わり続けるチームづくりのポイントとは?
15. まったく先が予測できない、極めて不確実性の高い状況で、人や組織や共同体はどのように未来を共創していくのか?
16. 今私たちが考えたい、人と組織の未来を拓く「問い」は何か?
オープンラボ・ウィークの概要と参加者からのコメント
そこから、オープンラボを正式な社内プロジェクトとして立ち上げ、スタートしたのが2020年10月中旬でした。2カ月という期間で、メンバーから提案された16の問いすべてについて、無事にセッションとして参加者に届けられる形にすることができ、正直ホッとしています。さらに付け加えるなら、皆が2020年に磨き上げたオンラインでの取り組みの技やスキルを存分に発揮してくれたように思います。オンラインで1週間にわたり、皆で1コマずつ、代わる代わる担当した取り組みは、想像を越えた面白いエクスペリエンスにつながったかもしれません。もちろん、今後生かしていきたい反省点はあるものの、参加者の皆さまからいただいたコメントからは、「素直にやってよかった」「参加された皆さまにとっていろいろな価値を提供きてよかった」と思える場をつくることができたと感じています。
● いつの間にか蓄積していた疲れの中から、新たな勇気を取り戻す体験でした。
● 実現したい世界とその先の明るい未来が見えた時間
● 自分がいま気になっていることの棚卸しと、状況を客観的に捉えることができ、落ち着いた気持ちだった。
● 組織や人財に関する外部学習参加は久しぶりでしたので、新鮮でした。
● 違う会社の方の視点にも触れることができ、またヒューマンバリューからの整理された情報提供によって、大事な観点を再認識できる場でした。
● 刺激的で、とても豊かな時間でした。
● ZOOMを介してなのに、だんだん仲間意識が生まれてきたような気がしたのが、不思議な体験でした。
● 直接お会いしていないにもかかわらず、割と本音に近いお話ができて、不思議な体験でした。
● 普段得られない気づきを得られたことと、自分の考え方が整理できたこと
● 自分の中で漠然と考えていたことについてリフレクションし、言語化して共有することができた機会であり、同時に、具体的に言語化された概念をインプットすることで新たな気づきが得られた機会であったと感じています。
● 一年の締めくくりとして、最高に楽しい時間! たくさん振り返りができて、未来についても具体的にたくさん考えられた。
● ヒューマンバリューさんからの情報提供によって、原点回帰というか、大事な観点を再認識できました。自分の中でフツフツしていたことが明確な疑問と確信をもてた感じです。
● 「探求とは?」ということを、あらためて考えられた体験
● 思考が停止しかけていたことに気づかされ、再生ボタンを押すことができた場でした。
開催してみての学び、生まれた価値、今後につなげたいこと
5日間にわたった延べ21時間に及ぶ探求の時間も、終わってみると、長いようで短くも感じられます。
予想を超えて、1人で複数のセッションに連日のように参加してくださる方も多く、中にはすべてのセッションをコンプリートする方もいたり、最後のセッションに至っては、主催者と参加者の線引きも不思議となくなり、一週間を共に走り抜けた仲間のような感覚が生まれました。
2020年は特別な年でしたが、世界中の人々が困難を共に体験したことによって、今後つながり合うきっかけになることもあるのかもしれません。未来を拓く数々の問いと共に、2020年の出来事を振り返りながら、人とつながり、共に探求することの尊さを、あらためて強く感じる貴重な体験になったように思います。
今回のオープンラボ・ウィークは、ヒューマンバリューにとっても貴重な経験になったように思います。現在の状況が今後どのようになったとしても、今回つながることのできた皆さまとの輪を、より大きくしていけるように、私たちも未来を拓くアクションを生み出していければと思います。
なお、オープンラボでの各セッションの探求内容については、これから順を追って、レポート発信していきたいと考えています。そちらもぜひ楽しみにしていてください。