社員が推進する自律的変革の支援 ~「未来共創ミーティング」

近年は、個人に働きかける「人材開発」を超えて、組織的・集合的に成果を生み出す「組織開発」への注目が高まっています。今日の組織開発において、どのようなアプローチが求められるでしょうか。ヒューマンバリューでは、第三者による「診断・介入」的なアプローチではなく、社員が進める「自律型」のアプローチで推進することをレバレッジと捉え、組織開発を支援しています。

関連するキーワード

「診断・介入型」アプローチによる組織開発の限界

旧来の組織開発の取り組みでは、専門家によって組織の現状が分析・診断され、 解決に向けた介入手段や計画が立てられる「診断・介入型」と呼ばれるアプローチが取られていました。
このアプローチでも、組織に良い影響を与えることはもちろんありますが、第三者や専門家が現場に介入して、変化をもたらそうとするので、現場には受け身の態度を生んでしまったり、専門家がいないと変化を起こせないというような、依存を生んでしまいがちです。そのため、介入が終わると組織の変化が止まってしまうことが少なくありません。

「自律的変革」アプローチによる組織開発の可能性

そこで今、求められるのは、社員一人ひとりが自分たちの実現したい状態を描き、現状の課題への理解を深めながら、チーム全員で協働し、変化を生成していく「自律的変革」アプローチによる組織開発です。
現場の社員当事者間による集合的学習と、自律的な行動・変化を生み出すプロセスを育み、第三者や専門家の介入なしに、組織が漸進的に変化し続けることが重要となります。

「未来共創ミーティング」による支援

では、そうした社員による「自律的変革」アプローチは、具体的にはどのように進めればよいのでしょうか。ヒューマンバリューでは、これまで多くの企業で実践してきた組織開発のナレッジ・ノウハウを集約して、「未来共創ミーティング」と呼ぶ方法論を開発し、展開しています。未来共創ミーティングの取り組みでは、職場のリーダー・マネジャーが推進役となって開催する約90分間の定期的なオフサイトのミーティングを起点にし、メンバー全員が「グロース・マインドセット」や「心理的安全性」などのコンセプトを学び、共通言語を得ていきます。そして、ありたい姿に向けてチーム間で対話を行いながら、一歩ずつ自分たちのチャレンジや変化を生み出していきます。こうしたプロセスを通じて、外部からの介入がなくても、社員間の関係性や思考の様式に自律的な変化が生まれ、新たな習慣が築かれていくのです。

「自律型」アプローチによる変革推進のレバレッジ

では、こうした「未来共創ミーティング」のような取り組みを通じて、自律的な変革が推進されるには、何がレバレッジとなるでしょうか。これまでの経験から、私たちは次の3つのポイントが重要と考えています。

1.ポジティブ・アプローチ

自律的変革で最も重要となるのは、社員自らがありたい姿を描くことで、主体性を解放することです。
あるべき姿が基準として与えられ、それと現状とのギャップに着目する「ギャップ・アプローチ」では、変化のエネルギーは育まれません。自ら描いたありたい姿に向かって、小さな変化を大切に育み、新たなチャレンジを生み出し続ける「ポジティブ・アプローチ」のプロセスを用いることが自律的な変革のエネルギーにつながります。
そこで「未来共創ミーティング」においても、そうした「ポジティブ・アプローチ」に基づいた対話が多く生まれるようなデザインを行うことが重要です。

2.チームの見える化

社員が自分たちで変革を推進する上では、自分たちの状態を自分たちで把握できるようにすることが必要です。自分たちでチームを良くしているという実感を得られることが、自律性を高めるのです。
そこで「未来共創ミーティング」では、OcapiというWebアンケートを用いて、チームの状態を見える化していきます。チームの「関係・思考・行動の質」を把握し、次のチャレンジが生み出しやすくなる状態を実現していきます。

3.変化のダイナミズム

3点目は変化のダイナミズムを生むことです。「未来共創ミーティング」は、チーム内でオフサイトのミーティングを繰り返していきますが、組織的に取り組んでいくと、各組織で様々な実践が生まれてきます。たとえば、そうした実践の様子やどんな変化が生まれているのかを、1つの職場に閉じずに、組織全体で共有できるようにするなど、相互作用を起こしていきます。このように変化のダイナミズムを取り組んでいる人が実感できると、自律的な変革が前に進みやすくなります。
こうしたダイナミズムは、放っておいて生まれるものではありません。そこで、自律的な変革が育まれることをサポートする黒子としての「事務局」や「推進チーム」の存在が重要になるのです。 

広がる「未来共創ミーティング」の取り組み

ヒューマンバリューでは、こうした変革のレバレッジを大切にしながら、多くの企業のサポートを行ってきました。これまでに約3万人の参加者が「未来共創ミーティング」に取り組み、個人的・組織的な成果につなげています。推進にあたっては、社員が継続的にミーティングに取り組めるよう、ツールやガイドブック、進行スライドを提供しています。また、推進チームや事務局が主体となって、全体のプロセスを推進できるようなサポートを行っています。
こうした取り組みを通じて、特別な専門家でなくとも、誰もが自分たちの職場をよくしていける存在になれることを応援していきたいと思います。

<主な取り組みやプロジェクトの例>

・主体的で生産性の高いカルチャーを築く~大手製薬メーカーの取り組み~
・チーム力の低下(職場の活気・連携)の改善に向けた未来共創ミーティングの展開~大手メーカーの取り組み~
・全国の支店約10,000名の社員による大規模「未来共創ミーティング」~大手証券会社の取り組み~
・大手自動車メーカー研究開発部門における展開
・医療機関向け人材紹介企業における展開

関連する取り組み

組織変革

ステークホルダー全員で生み出す変革支援

一部の人だけではなく、ステークホルダー全員が参加して変革を推進する「ホールシステム・アプローチ」は、組織変革の主流のアプローチとなっています。 ヒューマンバリューでは、多様な方法論を活用しながら、全員参加の変革を支援しています。

組織変革

アジャイルなチーム運営手法『チームステアリング』

組織はいま、急激な変化に耐えて、新しい価値を生み出させる文化とシステムを獲得することが迫られています。それを実現するには、その基盤として、今までの習慣を打破した、これまでとは異なるマネジメントやコミュニケーションの技法を修練する必要があります。
『チームステアリング』は、チームメンバー一人ひとりの力(強みや価値)を解放し、コラボレーションしながら、柔軟に素早く成果を生み出し続けるためのチーム運営手法です。従来型のミーティングやコミュニケーション方法を進化させることで、組織の文化をより創造的で働きがいのあるものに変え、外的な環境変化を敏感に察知し、スピードの早い柔軟な対応を可能にする「アジャイル(俊敏な)」な組織文化を生み出します。

組織変革

組織文化(カルチャー)の変革

変化が常態化した現在において、企業のカルチャーこそが、未来への価値創造の源泉となるという認識が広がってきています。ヒューマンバリューでは、長年に渡ってカルチャーの変革の原理とアプローチを探求し、企業での実践をサポートし続けています。

組織変革

地域活性・市民参加

本当の意味での「地方創成」は、その地域に生き、関わる一人ひとりの市民参加を通してこそ実現が可能となります。ヒューマンバリューでは、多くの市民・ステークホルダー(影響関係者)が共創的に価値を生み出す場とプロセスの構築を支援し、適切な市民参加による民主主義が社会に根づくところに貢献しています。

組織変革

場づくりで組織を変革する(プロセス・ガーデニング)

近年、人材開発や組織変革の取り組みにおいて、人々の相互作用の中から主体的な変化を生み出し継続するための「場づくり」の重要性が高まっています。ヒューマンバリューでは、多様な人々がオープンに話し合う中で関係性を高めながら、知識やアイデア、新たなアクションが生み出されるような「場」と、取り組み全体を通して変化を育む「プロセス」に働きかける「場づくり」を「プロセス・ガーデニング」と位置づけ、人や組織の変化と成長を支援しています。

組織変革

人と組織のエージェンシーを醸成し、組織にアジャイル(俊敏)を獲得する

ヒューマンバリューでは、人や組織の「エージェンシー」を醸成し、組織にアジャイル(俊敏)を獲得するプロセスを支援しています。

組織変革

学習する組織の構築支援

ピーター・センゲらが提唱した「ラーニング・オーガニゼーション(学習する組織)」の考え方は、今では変化の時代に価値やイノベーションを生み出す企業経営のOS(オペレーティング・システム)であるといえます。ヒューマンバリューは、20年以上の研究・実践に基づいて、「学習する組織」に基づいた組織変革をサポートしています。

組織変革

経営チームの変革

企業経営を取り巻く状況の複雑性が高まり、予測不能な激しい変化の波を受ける中で、経営層が1つのチームとしてコミュニケーションが取れていない、動いていない状態では、企業の価値創造を行うことは難しいでしょう。 経営層は今を守るだけでなく、目指すべき方向を定めつつ、新しい事業を生み出し続ける必要があります。ヒューマンバリューでは、役員や経営陣が個々の総和を越えた力を生み出し、1つのチームとしての新たな関係性や役割と行動力を獲得するためのオフサイト・ダイアログ合宿をサポートします。

もっと見る

関連するレポート

【Rethink -組織開発を再考する対話会 実施レポート】第3回:人間性を回復し、ソーシャル・キャピタルを育むワールド・カフェの可能性

2024.02.08インサイトレポート

【Rethink:組織開発を再考する対話会】の第3回目を、2024年1月18日(木)にオンラインで実施しました。今回のテーマは、「人間性を回復し、ソーシャル・キャピタルを育むワールド・カフェの可能性」でした。本レポートでは、対話会当日の様子や参加者の皆さま同士の対話から生まれた気づきをご紹介できればと思います。

実践者から学ぶDAO(Decentralized Autonomous Organization)型組織

2022.11.11インサイトレポート

株式会社ヒューマンバリュー プロセスガーデナー清成勇一 2022年に入ってから、一般のニュースなどのメディアにおいても、Web3やNFT、メタバース、DAOというキーワードをよく耳にするようになりました。筆者は、「自律分散型組織」について調査・研究を進める中で、数年前から、DAO(ダオ)に着目していました。DAOとは「Decentralized Autonomous Organization」の

コラム:ピープル・センタードの人事・経営に向き合う5つの「問い」

2022.10.28インサイトレポート

株式会社ヒューマンバリュー 取締役主任研究員 川口 大輔 「人」を中心に置いた経営へのシフトが加速しています。パーパス経営、人的資本経営、人的情報開示、ESG経営、エンゲージメント、ウェルビーイング、D&I、リスキリングなど様々なキーワードが飛び交う中、こうした動きを一過性のブームやトレンドではなく、本質的な取り組みや価値の創出につなげていくために、私たちは何を大切にしていく必要がある

自律分散型組織で求められる個人のマインドセット変容

2022.10.19インサイトレポート

株式会社ヒューマンバリュー 会長高間邦男 今日、企業がイノベーションを行っていくには、メンバーの自律性と創造性の発揮が必要だと言われています。それを実現するために、先進的な取り組みを行う企業の中には、組織の構造を従来の管理統制型のピラミッド組織から自律分散型組織に変えていこうという試みをしているところがあります。それを実現する方法としては、組織の文化や思想を変革していくことが求められます

組織にアジャイルを獲得する〜今、求められるエージェンシー〜

2022.01.20インサイトレポート

プロセス・ガーデナー 高橋尚子 激変する外部環境の中で、SDGsへの対応、イノベーション、生産性の向上などの山積するテーマを推進していくには、組織のメンバーの自律的取り組みが欠かせません。そういった背景から、メンバーの主体性を高めるにはどうしたら良いのかといった声がよく聞かれます。この課題に対し、最近、社会学や哲学、教育の分野で取り上げられている「エージェンシー」という概念が、取り組みを検討

アジャイル組織開発とは何か

2021.10.25インサイトレポート

株式会社ヒューマンバリュー 会長 高間邦男 ソフトウエア開発の手法として実績をあげてきたアジャイルの考え方は、一般の企業組織にも適応可能で高い成果を期待できるところから、最近では企業内の様々なプロジェクトにアジャイルを取り入れる試みが見られるようになってきました。また、いくつかの企業では企業全体をアジャイル組織に変革させるという取り組みが始まっています。本稿ではこういったアジャイルな振る舞いを

<HCIバーチャル・カンファレンス2021:Create a Culture of Feedback and Performance参加報告> 〜「フィードバック」を軸としたパフォーマンス向上の取り組み〜

2021.10.01インサイトレポート

2021年 6月 30日に、HCIバーチャル・カンファレンス「Create a Culture of Feedback and Performance(フィードバックとパフォーマンスのカルチャーを築く)」が開催されました。

コラム:『会話からはじまるキャリア開発』あとがき

2021.08.27インサイトレポート

ヒューマンバリューでは、2020年8月に『会話からはじまるキャリア開発』を発刊しました。本コラムは、訳者として制作に関わった私(佐野)が、発刊後の様々な方との対話や探求、そして読書会の実施を通して気づいたこと、感じたことなどを言語化し、本書の「あとがき」として、共有してみたいと思います。

ラーニング・ジャーニーが広げる学びの可能性〜『今まさに現れようとしている未来』から学ぶ10のインサイト〜

2021.07.29インサイトレポート

過去に正しいと思われていたビジネスモデルや価値観が揺らぎ、変容している現在、「今世界で起きていることへの感度を高め、保持し続けてきたものの見方・枠組みを手放し、変化の兆しが自分たちにどんな意味をもつのかを問い続け、未来への洞察を得る」ことの重要性が認識されるようになっています。 そうした要請に対して、企業で働く人々が越境して学ぶ「ラーニング・ジャーニー」が高い効果を生み出すことが、企業の現場で認

不確実な時代において、なぜ自律分散型組織が効果的なのか?

2021.07.19インサイトレポート

自律分散型組織については、1990年初頭に登場した「学習する組織」の中で、その必要性や有用性が語られて以降、変革の機運が高まり、様々なプラクティスが生まれてきました。一方、多くの企業は未だに中央集権的なマネジメント構造に基づいた組織運営から脱却することの難しさに直面しているものと思います。しかしながら、COVID-19の世界的なパンデミックをはじめ、社会的な文脈が大きく変わっていく流れの中で、これ

もっと見る