「パフォーマンス・マネジメント革新フォーラム2019」開催レポート
2019年2月21日、今年で4回目となる『パフォーマンス・マネジメント革新フォーラム2019』を、虎ノ門ヒルズフォーラムにて開催いたしました。今回は過去最高となる約230人の方々が参加されました。今回のフォーラムでは、日本におけるピープルセンタードへのパラダイムシフトの意味を探求し、実践企業4社の事例ストーリーを交えつつ、推進する上での課題感やポイントについて参加者の皆さまと対話を重ねていきました。ここでは、フォーラムの様子を写真と共に振り返りながら紹介いたします。
オープニング
参加者の皆さまのチェックインの様子です。近くに座る数名の方と参加された背景や今の気持を共有する中で、会場が和やかで楽しそうな雰囲気に包まれていきました。4回目の開催ということで、毎年参加している方、過去に参加した方から紹介を受けた方、初めてこのテーマを知って参加を決めた方など、それぞれの観点でフォーラムの場への期待を話されていました。
冒頭、今回のフォーラムの目的と内容が共有されました。過去3回のフォーラムを経て、4回目となる今回は、「経営」「組織」「働く」それぞれのパラダイムシフトの意味を参加された皆さまと共に考えながら、様々な施策を統合してピープルセンタードを実現していくためのレバレッジについて探求していこうというテーマとなっています。
今起きているパラダイムシフトを俯瞰する
講演の最初は、弊社ヒューマンバリューの阿諏訪から、パフォーマンス・マネジメント革新のこれまでの経緯と全体像について共有しました。
まずは、「カンパニー・センタード」から「ピープル・センタード」へのシフトが起きており、外側からコントロールするのではなく、カスタマーや生み出す価値にフォーカスし、人の素晴らしさや可能性・成長を引き出し、生成的に取り組みを進化させていこうという企業文化の変革を通して、ビジネスの変革を図る企業が増えている状況を俯瞰しました。
海外企業のパフォーマンス・マネジメント革新の現在
昨年11月に行われたPerformance Management Conferenceのセッションの参加を踏まえ、そこで得た情報を共有しました。フォーラムで扱われた事例として、チームの成長にフォーカスを当てたCISCO社、ピアフィードバックを促進することで会社のバリューとの結びつきを生み出しているYork社、意味のあるフィードバックを生み出すことに注力しているBMOフィナンシャルグループ、自分の仕事の意義・やりがい・目標やミッションとのつながりを生み出したNielsen社の事例が紹介されました。この数年の傾向としては、ピープル・センタードの動きの中で「個人の成長・パフォーマンス」にフォーカスしてきたことへの反省から「チームで生み出すパフォーマンス」の向上へのフォーカスへのシフトが起きているようです。
ピープルセンタードへのシフトを脳科学の議論から考える
ヒューマンバリューの川口からは、2015年から継続して参加しているNeuroLeadership Summitにおいて探求されてきたテーマの変遷が共有されました。2018年にフォーカスされた「ゴール設定」「リーダーシップ開発」「フィードバック」「チームのあり方」「学習のあり方」の再考(rethink)を促す議論が共有され、あらためてビジネスのトレンドと重なるピープル・センタードへのシフトが、脳科学の分野でも探求されていることがうかがえました。
▼情報共有後に感想を話し合う参加者の様子
革新に挑戦している4社のストーリー
午後は、株式会社メルカリ、ウシオ電機株式会社、ジョンソン&ジョンソン株式会社、アデコ株式会社の各社で、取り組みを実践されている方々に登壇いただき、事例のストーリーを共有していただきました。共有後は、フォーラム参加者の皆さまとのダイアログも挟みながら、それぞれの取り組みの背景や意味を探求していきました。各社のストーリーを紹介に共有いたします。
株式会社メルカリの木下達夫様、高橋寛行様からは、「非連続な成長を実現するための人・組織づくりの現在地」というテーマで、モノ・お金の流動性のイノベーションの実現に向けて急成長中であるメルカリにおける特有な人事制度と、現在の課題、今後取り組みたいことをお話しいただきました。カルチャー&人事制度設計で大切にされている「性善説×バリュー」を元に、従業員を信頼した最小限のルール運用や、ハード・ソフト・情報のオープン、バリュー浸透がなされていることについて事例も交えて共有されました。生き生きと楽しそうに語られるお二人の姿がとても印象的な時間でした。
ウシオ電機株式会社の流郷紀子様は、「事業成長と社員成長の同時実現に向けたパフォーマンス・マネジメントの革新」というテーマで、目標・評価制度をどのように変革してきたのか、その取り組みで見えてきたことなどをお話しいただきました。2016年に導入した目標管理制度の運用を、ミッションベース(仕事の意義・意味)としたマネジメントにすべく、「現場に寄り添う人事でありたい」という強い想いをもち、メンバーや現場と語り合いながら現実に向き合い続けている流郷さんのあり方に胸を打たれる時間でした。
ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の藤間朝子様は、「100年企業ジョンソン・エンド・ジョンソンの挑戦〜パフォーマンス・マネジメント変革とさらなる進化〜」というテーマで、パフォーマンス・マネジメントの変革プロセスや、推進する上でのチャレンジ、ポイントなどがストーリーを交えながら共有されました。その中で、”Employee Centerd”の実現に向けて、人事の役割がマネジャーや社員の自律的なマインドセットを生み出す働きかけにシフトしていったこと、すべての取り組みの中で、働く人の想いや対話が大切にされていることが印象的でした。
アデコ株式会社の平野健二様、土屋恵子様、佐藤奈美様からは、「社員が主体となって実現する未来の働き方『Future WOW!』」というテーマで、社員が主体となるカルチャーを実現するための取り組みが共有されました。
「働くことって生きることだよね」という問いからプロジェクトはスタートし、プロジェクトメンバーとの対話を通じて、「自分たちの人生を豊かにすると同時にアデコのビジョンを実現する。そのために仕組みやルールで管理するのではなく、メンバーを信じる。そのために柔軟な働き方を実現する」という意味や目的が生み出され、社員の共感を得ながら取り組みを続けているとのことです。登壇された皆さまのチームワークやお互いを大切にされている様子も伝わってきた時間でした。
質疑応答&パネル・ダイアログ
各社からのストーリーの共有後は、休憩を挟み、会場からの質問に対して4社の方々に答えていただきながら、ダイアログを深めていきました。「HRにテクノロジーをどのように取り入れるのか?」という問いからは、人事がより人事らしい価値を生み出す仕事をしていくことの必要について各社の皆さまから語られました。また、「社員の声をくみ取るほど不満が高まる」という悩みについては、コミュニケーションや検討プロセスの透明性を保つことや、そういった声をファシリテーションしているという経験が語られました。「完璧を求めすぎない」「正解はない」「共により良くしていく」というカルチャーをつくっていく重要性も全体を通して語られていたように思います。お互いの実践からヒントを得て、いかそうとされている皆さまの姿勢も印象的でした。
ピープルセンタードの実現に向けて、 自組織における変革のレバレッジを探究する
研究会参加メンバーによるパネル・ダイアログ
第4期パフォーマス・マネジメント革新研究会のメンバーである、パナソニック株式会社、株式会社オズマピーアール、三菱商事株式会社、株式会社リクルートの各社の皆さまに登壇いただき、会場から出てきた探求テーマ(ポストイットを整理)を元にパネル・ダイアログを行いました。あらためて「完璧でなくてもよい」「誰も答えを知らない」「皆で探し続ける」というマインドセットを社内で育んでいくことの重要性や、現場に任せたり、自分で考え話し合う機会をつくることなど、ピープル・センタードを実現していくプロセスのアイデアなども共有されました。また、研究会に参加したことで、会社を越えて共通するテーマが多いことに気づいたり、自社の取り組みへの示唆をもらえたといった体験も共有され、この後のダイアログの可能性にも触れられていたように思います。
探究テーマに分かれてダイアログ
会場の参加者の皆さまと共に生み出した探求テーマを元に「ピープルセンタードの実現に向けて、自組織における変革のレバレッジを探究する」ダイアログを行いました。
ここでは、自分が関心のあるテーマに集ってダイアログを行いましたが、どのテーマにも多くの方々が集まり、熱心に検討されているその様子には、例年以上のものを感じました。お互いの課題やチャレンジに対して参考になりそうな経験やアイデアを積極的に共有しながらヒントを得て、これからどう取り組むかを語り合っていることがどのサークルでも行なわれており、真剣ながらも、とても楽しそうに話し合いをされているのが印象的でした。
クロージング
ヒューマンバリューの兼清からのロングチェックアウトとして、フォーラムに参加された皆さまとご一緒できたことと、4社のご登壇企業の皆さまや研究会企業の皆さまへの感謝が述べられました。また、参加された皆さまへのメッセージとして、変化が激しい中で新たなチャレンジを生み出すためには、新たな世界に触れたり異なる立場の方との対話することと、その中で自分の枠組みを再構成して実現したい未来を生み出していくことが大切であることなど、ヒューマンバリューがこのフォーラムの開催に込めた想いも語られました。
チェックアウト
最後に、フォーラムを通じて「発見したこと、気づいたこと」「大事にしたいこと」「これから考えていきたいこと」について記入した、ポストイットを貼り出し、参加者全体で1日の探求を共有しました。
ここまで、フォーラムの様子を写真と共にご紹介してきました。
4回目を迎えた今年のフォーラムでは、日本においてパフォーマンス・マネジメントの革新を実現するとはどういうことなのか、そのために必要なマインドセットの変革とはどういうチャレンジなのかが具体化してきたように思います。One size fits Oneの言葉が象徴するように、パフォーマンス・マネジメント革新を実現することに正解や1つのやり方があるわけではなく、それぞれの組織の実現したい状態に向けた道を、想いをもった仲間と共にピープル・センタードな歩みを続けることの大切さが終日語られていたことも印象的でした。それが事例共有企業や研究会企業の皆さま、参加者の皆さまとの境界線を無くし、それぞれのチャレンジから真摯に学び合いヒントを得ようという、積極的な関わり合いを生んでいたように感じました。この場での経験や出会いが、皆さまの歩みを何かしら支えていってくれるように心から願っております。
私たちヒューマンバリューも、この場をご一緒させていただいた皆さんと共に、今後もさらに国内企業での実践を続けながら、日本でのパフォーマンス・マネジメントの革新のうねりを、さらに大きなものへと育んでいきたいと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
今回の素晴らしい場は、貴重な実践事例を共有いただいたメルカリ木下様、高橋様、ウシオ電機流郷様、ジョンソン・エンド・ジョンソン藤間様、アデコ平野様、土屋様、佐藤様、さらには第4期PMI研究会の皆さまが、ピープル・センタードの姿勢で、私たちヒューマンバリューのメンバーと協働してくださったことで実現できました。心から感謝申し上げます。また、本フォーラムは、『パフォーマンス・マネジメント革新研究会』の第4期メンバーの皆さまと十数回の会合を重ね、研究をしてきたことによって開催することができました。テーマに対してオープンに真摯な探求を続けてくださった研究会メンバーの皆さまに、この場を借りて、厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
<研究会メンバーの皆さま>
・株式会社アイ・ラーニング 太田賢様
・アデコ株式会社 土屋恵子様、藤野恵美子様
・株式会社オズマピーアール 榑林佐和子様、白井洋介様
・株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン 秋山竜様、菊池一恵様
・日本コカ・コーラ株式会社 大島千春様、山家由美子様
・株式会社 Consulente HYAKUNEN 上野佐保様、前山匡右様
・日産自動車株式会社 西出恵美様、吉川彩様
・パーソルキャリア株式会社 乾宏輝様、高木絢子様
・パーソルホールディングス株式会社 吉沢真紀様
・株式会社博報堂 田路崇人様
・パナソニック株式会社 清水慶太様、福永泰士様
・福島トヨペット株式会社 池澤幸一様、佐藤藍子様
・株式会社フルスピード 関根悠様
・三菱商事株式会社 黒田麻美様、田中大貴様
・株式会社リクルート 西村隆宏様、林輝葉様