ATD(The Association for Talent Development)
ASTD1998概要
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ASTD’98国際会議報告 ─パフォーマンス改善とニーズアセスメントの動向
今回のHVDリポートは、1998年5月31日~6月4日にわたって、米国カリフォルニア州サンフランシスコ市において開催されました『ASTD ’98(1998年度ASTD国際会議&EXPO)』の概要報告と、今大会全体で特に話題として取り上げられていた「パフォーマンス改善」と「ニーズアセスメント」の動向についてご紹介したいと思います。
世界最大の人材開発イベント
本リポートの第1号でも紹介しましたが、ASTD(American Society for Training & Development=米国人材開発機構)は、1944年に設立された非営利団体で、米国ヴァージニア州アレクサンドリアに本部を置いています。約160の支部と65,000人の会員(20,000を越える企業や組織の代表を含む)をもつ、訓練・人材開発・パフォーマンスに関する世界最大の会員制組織です。
ASTD国際会議は今年で54回目を迎え、人的資源開発に関する世界最大の会議&EXPOとして知られています。会議は、5日間にわたって催される250余のセッションと40余のフォーラム、数々のイベントから成っており、人的資源開発に関する世界の最新の動向をつかむことができます。今年は、世界82カ国のHRD管理者や専門家、コンサルタントが集まり、過去最高の15,000名が出席しました。また、会議期間中に開催されているEXPOには、訓練開発に携わる575社が出展しました。
今年の参加者のうち海外からの参加者は2,700名で、日本からは約180名が参加しました。昨年までの日本からの参加者は、多くても30~40名ほどではなかったかと思われますので、今年は日本での関心の高まりが感じられます。
日本から参加した主な団体は、弊社主催のグループが合計42名、ビジネスコンサルタント(B-con)の自社のコンサルタント60名を含む合計68名です。その他、富士ゼロックス総合教育研究所4~5名、日立インフォメーションアカデミー4名、産能大学4名、NTTデータ通信2名の方々と現地でお会いしました。
今回の報告は、以上の方々との情報交換や現地でのミーティングを参考にして作成されました。参加されたみなさんには、ご一緒に学習機会をもたせていただきましたことを、この場を借りて深く御礼申し上げます。
ASTD ’98の全体的な傾向
中心となったテーマ
今年は昨年までの傾向と異なり、パフォーマンスやテクノロジーなどのテーマに注力されており、従来、数多く取り上げられていたエンパワーメントやリーダーシップ、ラーニングオーガニゼーションといったテーマが減少していました。
ASTD ’98は、次の7つのテーマを中心に展開されました。
1.マネジメントとリーダーシップの開発
2.パフォーマンス改善
3.トレーニングとパフォーマンスの測定と評価
4.学習テクノロジー
5.トレーニングの基本
6.変化管理
7.職場問題
その中でも特に2と3のテーマにウエイトが置かれているようでした。これは、昨年に行われたセッションのプレゼンター募集の際に、上記の7つのうち2と3で60%のテーマを取り上げるという方針をASTD事務局が採った結果だと思われます。
全体的印象
米国内の参加者はともかく、海外からの参加者は、今回は昨年に比べて内容が下がったという印象をもったようです。
私どもの印象としても、大会全体のプロセスの中で訴えかけられるメッセージ(たとえば、「パフォーマンスやテクノロジーの追求ばかりをして、本当に人間が幸せになるのか」といった人間としての本質的なあり方の問いかけなど)や新しいテーマが少ないように感じました。
反面、即実務に役立つ基本的な考え方や実例の紹介が多く、会議全体が現実のパフォーマンスに転移しやすい(直結する)内容を重視したように思われました。
これは、米国企業におけるHRD部門の関心の移行を反映しているものと思われます。その中でも特に、「今後3年間の10大傾向の予測」(HVDリポート第1号 P.5)の上位7つの影響が強く出ているようです(下記参照)。
・「トレーニング」の提供から、「パフォーマンス」改善への移行
・コンピューター・スキル訓練の需要の増大
・「トレーニング」の提供から、「学習」の促進への移行
・組織内外の境界線を越えて仕事をする必要性の増大(バーチャル組織)
・トレーニングの成果を測定する必要性の増大業績を測定する必要性の増大実際にトレーニングを行うことから、学習ニーズと学習方法・技術をマッチさせることへの移行
ASTD ’98のキーワード
以上のようなASTD’98の全体的傾向を踏まえ、今大会の特徴的なキーワードとして考えられるのは、次のようなものです。
・トレーニングの効果測定
・ニーズ・アセスメント(ニーズ・サーベイ)
・パフォーマンス・インプルーブ
・HPT(ヒューマン・パフォーマンス・テクノロジー)
・ロング・ディスタンス・トレーニング(ウエッブ・ベースド・トレーニング)