ATD(The Association for Talent Development)
ASTD2009概要
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ASTDについて
ASTDは、1944年に設立された非営利団体で、世界中の企業や政府等の組織における職場学習と、従業員と経営者の機能性の向上を支援することをミッションとした、訓練・開発・パフォーマンスに関する、世界第一の会員制組織です。米国ヴァージニア州アレクサンドリアに本部を置き、現在100以上の国々に70,000人余りの会員(会員には20,000を越える企業や組織の代表が含まれる)をもっています。
ASTDは国際的な企業と産業の訓練資源に対して比類ないアクセスをもち、その事業は、世界の最高水準にあると認められています。
ASTDは、トレーナーやトレーニング・マネジャーたちに専門的な開発材料やサービスを提供し、職場における学習促進を援助し、世界中の政府・企業等、各種組織に属する従業員や役員たちのコンピタンス・パフォーマンス・充足感を高める手助けをすることを使命としています。
ASTD2009の参加国・参加者数
本年の参加国数と参加者数は以下の通りとなっています。
・参加者総数
8,000名
・参加国数
77カ国
・米国外からの参加者が多い順
韓 国:151名
カナダ:124名
クウェート:104名
日 本:99名
デンマーク:63名
ASTD2009の主要テーマ
ASTD2009は、以下の9テーマを中心に展開されました。
1. Personal and Professional Development
個人およびプロフェッショナル開発
2. Designing and Delivering Learning
ラーニングのデザインとデリバリー
3. Leadership and Management Development
リーダーシップとマネジメント開発
4. Learning as a Business Strategy
ビジネス戦略としてのラーニング
5. Career Planning and Talent Management
キャリア・プランニングとタレント・マネジメント
6. Measurement, Evaluation, and ROI
測定、評価、ROI
7. E-Learning
Eラーニング
8. Facilitating Organizational Change
組織変革をファシリテートする
9. Performance Improvement
パフォーマンス改善
ASTD2009国際会議の傾向
職場における学習・訓練・開発・パフォーマンスに関する世界最大の会員制組織であるASTDが毎年開催しているASTD国際会議(ASTD2009 International Conference & EXPO)が、2009年5月31日~6月3日に米国ワシントンD.C.にて開催された。
このコンファレンスは、世界中から集った企業や教育機関・行政体の人材開発や組織開発に携わる人たちが、一堂に会してそれぞれの取り組みを発表し、学びあう場として多くの参加者を集めている。
今回の会議は、リーマンショックに始まる世界同時不況と新型インフルエンザの影響かと思うが、参加者は昨年の80カ国10,000人に比べると、今年は77カ国8,000人と減少した。全体的に盛況感は欠けていたものの、今後の人材開発・組織変革の方向性がどういった方向に舵を切っていくのかの数々のヒントを与えてくれる会議だった。
日本からの参加者は、新型インフルエンザに対する各企業の渡航規制で、直前になって半分以上がキャンセルをしたのではないかと推察される。しかし、こうした厳しい状況のため、もっと参加者は減少しているかと予想してのだが、ワシントンD.C.に実際来てみると、マスクをしている人は全く見かけず、インフルエンザそのものの影響はそれほどないように感じられた。
ASTD2009の統一テーマ「ラーニング・エンゲージメント」
ASTD国際会議では毎年、その年のテーマを掲げているが、ASTD2009のテーマは「A Learning Engagement(ラーニング・エンゲージメント)」である。このテーマの意味するところを、会議の事前にASTD事務局にメールで尋ねたところ、「ラーニング・エンゲージメント」とは、コンファレンスに参加することを通して、いかに関係が深まるかということを表しているとの答えだった。
つまり、このコンファレンスは、理論と実践が出会うことで、優れた理論からいかにベスト・プラクティスが生まれるかを学ぶ場であり、公的機関と私企業が出会い相互作用する場であり、アイデアとリアリティが出会って、学んだアイデアを仕事に戻って活かす場であるなど、多くのものが出会って関係性を深めるということを指しているという説明をいただいた。
こういった説明から、「ラーニング・エンゲージメント」を、日本語に置き換えるとすると、「学習の紐帯」「学習の関係」「学習を生み出す結びつき」「学習への主体的関係づけ」「学習の互恵関係」「学習を結びつける」といった言葉になるかと考える。
会議の概要
ASTD2009は会期中の5日間で、合計364本のセッションが開かれる大規模な会議である。構成としては、会期前のプレコンファレンスでASTDの1日から2日間のサーティフィケートプログラムが16コース開催される。これは人材開発や組織変革などの重要なテーマについて学習し、ASTDから認証が貰えるコースで、今年は日本からも数名が参加していた。また会期前には、12本のワークショップコースが開催される。
本会議では、基調講演が3本、コンカレント・セッションが延べ数で285本開催される。(同一テーマ・内容で2回開かれるセッション68件あるので、それらを除くと217件になる)
また、今年からの新しい試みの1つとして、マイクロセッションというのが12本開催された。これは、90分ほどのセッションで、3~4つ程度のセッションの見どころを20分から30分で、それぞれのプレゼンターが紹介するというものである。1人でこの会議に参加した場合は、多いに役立つ試みかと思う。コンカレント・セッションは、同時間帯に20本前後のセッションが進行しているが、身体は1つなので、頑張って全部参加しても最大12本のコンカレント・セッションしか受けることができない。
これでは、会議の全容や潮流を理解することはとてもできないので、とにかく全体で何が起きているのかを把握するには、セッションの半ばで走り回るという事態が起きる。そういった短い時間で要点を把握したい人の要望には、大変効果的な試みかと思えた。
しかし、実際に初日のマイクロセッションに行ってみると、その場に参加していた人数は4人で、閑散とした状態だった。後で聞くと最終的には10人程度が参加していた模様である。お手軽にセッションの内容を知りたいというニーズが低いのか、それとも周知されていなかったのか分からないが、来年もこの試みが続くことはないと予想される。
また、6月1日から3日までの3日間は、会議の進行と同時にEXPOが開催された。EXPOにおいては、68のカテゴリー(重複カテゴリー含む)で308のブースが出展されていた。昨年行われたASTD2008の出展社数が415であったので、約25%減である。やはり経済危機や新型インフルエンザで、特にアジア系のベンダーが出展を控えたことなどの影響だろう。
それから、今回からの新しい試みとして、バーチャル・コンファレンスが開催された。これはWEBから30セッション程度のコンカレント・セッションと基調講演が見られるというものである。ASTDの会員は500ドル程度、一般は900ドル程度で、世界中から参加できる。今回、インフレエンザの影響でワシントンD.C.に来られなかった日本の何人かの方々は、バーチャル・コンファレンスで参加していた。これはその場で質問のやり取りもできるそうで、参加者からは評判が良かった。アーカイブが30日間残っているようなので、毎晩徹夜して参加しなくてもよさそうである。
また、今回のワシントンD.C.に参加した人々には、全員にこのバーチャル・コンファレンスにアクセスできるIDがメールで後日送られた。
ASTD2009からみる人材開発・組織変革の全体的な傾向についての考察
ASTD2009は大規模な会議であるので、筆者1人で全容を把握することは不可能である。そこで、ヒューマンバリューが主催した現地での情報交換会に参加した方々の意見を参考にしながら、全体の傾向についての印象をまとめてみた。ASTDコンファレンスを通して今後の人材開発・組織変革のあり方を考えようとする方にとって、ひとつの仮説として探究の一助になれば幸いである。
経済危機における人材・組織開発のあり方
2009年のASTDの会長ジム・カパラ氏は、ジェネラル・セッションの挨拶で、困難な時代に生き残り繁栄するために、人材開発・組織開発に携わる人々がどうあるべきかということについてメッセージを発していた。これはASTDの公式ページに載っている、ASTD Economic Survival Guideとほぼ同様の内容であった。
・悪天候に耐え、景気が上向いたとき繁栄したいなら、企業は自分たちにとって重要なタレントを保護し、開発しなければならない。構成員を使い捨てとみなす古い枠組みを捨て払わなければならない
・経済危機に対して、揺らぎはするものの、崩壊していない企業は人的資本の価値を既に理解している
・ASTDとi4cpという調査会社が発表した「Learning in a Down Economy(低迷する景気における学習)」という調査においては、38%の企業が、この景気の低迷の時期において、学習により重点を置こうとしていることが示されている
・現在の経済危機の中で、最も困難なチャレンジのひとつは、次に何が起こるのか、いつ景気が回復するのかといったことがわからない中において、企業が行動しなければいけないということである。
しかし、ひとつだけ確かなことがある。古い枠組みで物事を進めることは戻ってこないということである
・今や多くのシステムが壊れ、再構築する変革の時期にあるといえる。学習を、ビジネスのインフラを革新するためのリーダーとしていこう
困難な状況だからこそ、学習の重要性が増しており、今までとは異なるやり方で、人材・組織開発に携わるものたちは学習に貢献していかなければならないということであろう。
ASTD2009の背景に流れている動向
今回のコンファレンスの背景に流れているコンテクストとしては大きく3つのテーマがあったと思う。
お互いに助け合おうというメッセージ
1つはリーマンショックによるマネー資本主義の破綻から、新自由主義経済・新保守主義の思想が終わりを告げ、新しい思想に向けて舵が切られたかのように、コンファレンスのプレゼンターのメッセージに変化が見られたことである。それは一言でいえば、「他の人をヘルプしよう」ということだった。
例えば、2007年のコンファレンスで基調講演を行った「一生モノの人脈力」の著者であるキース・フェラッツィ氏が再び今回のコンカレント・セッションでプレゼンテーションを行っていた。「Who’s Got Your Back」というフェラッツィ氏が最近発刊した本と同名のタイトルをつけたセッションの中で、背中から支えてくれる人を持つことが大切だと語っていた。そして、プレゼンテーションの結びでは、互いに後ろから支えあい助け合うライフライングループを作ろうという提唱を行っていた。
この本を買うとIDがついており、それによってソーシャルネットワークのメンバーになれるそうだ。そして、助けが必要なら自分はどこにでも行くから呼んで欲しいと講演を結んでいたのが印象的だった。
また、毎年必ずコンファレンスに参加している「1分間マネジャー」で著名なケン・ブランチャード氏は「私のペーパーを採点しないでください」というタイトルのセッションで、人々はミッションステートメントを持つべきだし、ゴールを持つべきだ。そして、ゴールでは皆がAの評価をとることを目指すだろう。そこで、マネジャーはメンバーがAを取れるように助けるべきである。評価の分布率を決めてABCに分けることは意味がない。メンバーがAをとれないときには、マネジャーが責任を果たしていないことになる。これからはメンバーを助けるリーダーが必要だから、ロールモデルを変えなければいけない。自己中心のリーダーは必要ないのだと、涙を浮かべて静かに訴えていた。そしてプレゼンテーションの最後には、助けが必要ならどこにでも行きますと言っていた。
例年のパワフルなスピーチとジョークを飛ばしながらのセッションとは趣が異なり、会場に深い感動を与え、スタンディングオベーションが起きていた。
コンファレンス最終日に基調講演を行った、ナショナルジオグラフィックなどの写真家であるアニー・グリフィス・ベルト氏も、自分の作品である美しい写真を舞台のスクリーンで紹介しながら、いま人々との絆が切れてきているので、お互いを尊重し理解して、助け合っていくことが大切だと訴えていた。
ベルト氏は自分が心から助けられるのは何だろうかと考え、それは環境だと思い、環境保護の写真を撮り、赤十字の募金集めのプロジェクトに協力しているそうだ。そして、講演の最後のメッセージとして、世の中を素晴らしいものにするには、皆さんが何かをすれば良いのだという言葉を投げかけていた。
こうしたメッセージは、従来の自己中心的な自分がいかに高い能力や成果を獲得できるようになるか、そして負けたものは努力が足りなかったのだといった捉え方が、互いに支えあい助け合うことが大事だというように大きくシフトしてきたことを印象づけた。
人材開発の民主化
2つ目は、格差社会を生み出した反省と、リアルな現場では全ての社員の力を引き出さないとパフォーマンスが出てこないということから、人材開発の対象が、従来のハイパフォーマーへのフォーカスから全員フォーカスに変わってきたことがあげられるだろう。
今年も昨年に引き続いてタレント・マネジメントやエンゲージメントという言葉が多く語られていた。しかし、タレント・マネジメントが従来は優秀な人の採用から育成・配置といった意味合いだったのが、最近は社員全員に対して1人ひとりの関心や強みにフォーカスして、それを引き出し開発することを支援する意味合いに徐々に論調が変わってきた。(しかし、ASTDとi4cpが発表したタレント・マネジメントの調査によれば、多くの企業はまだタレント・マネジメントを一部の優れた社員を対象としているのが実態である)
キャリア開発の第一人者で「何となく仕事がイヤッ!」の著者であるビバリー・ケイ氏のセッションでは、エンゲージメントを高めるために、メンバーの力を引き出し、メンバーを助けるマネジャーの役割について言及していた。
リーダーシップ開発でも、上と同様の動きが見られた。リーダーシップ開発の研究の世界的権威であるCCLがどのような提言をするかは毎年注目しているところなのだが、今回のセッションでは、リーダーシップの民主化をテーマにしていた。CCLが行ったアフリカ・インドで1年間に25,000人のリーダーを育成する試みを紹介しながら、「すべての人がリーダーシップ開発にアクセスできたら世界はどう変わるのか」という投げかけをしていた。そのためには、だれでも簡単にリーダーシップ開発のトレーナーができ、誰でも受けられるようなシンプルなものでなければならないということである。
セッションでは、CCLの2日間のプログラムを紹介するとともに、その中身のモジュールとして、人々が異なる価値観を持つことを理解するための、抽象的な写真を各自が選んでその想いを語り合うワークを参加者に体験させていた。
また今回、リーダーシップ開発への貢献が称えられて、ASTDのアオードを受賞した「信頼のリーダーシップ」「ほめ上手のリーダーになれ!」の著者であるジム・クーゼス氏とバリー・ポスナー氏がセッションを開いていた。その中で、リーダーのロールモデルを一般の方々に挙げてもらうとそれは有名人ではなく、自分の身近なファミリーが多いという事例を紹介しながら、信頼を築くことで誰もがリーダーになれるという考えを紹介していた。
このように、全員に焦点を当てるという民主化の考え方がさまざまなセッションに反映しているように思えた。
人材開発の枠組みがリアルへ変化
3つ目の傾向は、インターネットの生み出したネットワーク環境と経済環境の複雑性がさらに加速化した結果、それに対応する企業のリアルでの取り組みが、従来の人材開発での研修という枠組みをはるかに越えたため、人材開発の既存のモデルの多くが対応できなくなりつつあることである。
コンファレンスのいくつかのセッションでは、インターネットの進化により、ネットジェネレーション(NetGen)が登場してきたり、さまざまなソーシャルメディアが次々と登場したことから、人材開発部門がインフォーマル・ラーニングをコントロールできなくなったことをあげられていた。
今回初めてASTDのCEOが基調講演を行うという試みがあったが、そのトニー・ビンガム氏は、Web2.0がまさにインフォーマル・ラーニングになったので、人材開発はこのインフォーマル・ラーニングを取り込んでいかなければならないといった提唱をしていた。しかし、この提唱に対しては、ツアー参加者でITの詳しい人たちからは3年前ならまだしも、いまごろWeb2.0という言葉を出して、それがインフォーマル・ラーニングだという論には、ちょっと遅れているのではないかと疑問の声が上がっていた。
ナレッジマネジメントの専門家であり、「Eラーニング戦略」の著者であるマーク・ローゼンバーグ氏のセッションでは、インターネットのソーシャルメディアといったものをラーニングに取り込んでいかなければならないし、それをコントロールしなければならないと提唱していた。
他にもFEDEXのWiiを使ったトレーニングの紹介や、ミレニアルズとインフォーマル・ラーニングのあり方や、バーチャル・グローバルチームの紹介などのセッションが開かれていた。こういったセッションから、ラーニングというものが教室という枠から拡大して、ワークプレイス、そしてインターネットのソーシャルメディアを活用したインフォーマル・ラーニング広がったことで、人材開発の従来の枠組みを壊して、より総合的で多元軸をもった枠組みを創造していく必要性を感じさせた。
興味深く不思議なことに、企業事例のセッションには多くの参加者がいたが、逆に昨年まで人気だったリジェンドといわれるグルの開くセッションには参加人数が顕著に少なかった。前述したローゼンバーグ氏のセッションへの欧米人の参加者は20人程度だし、デイナ・ロビンソン、ビバリー・ケイ、フェラッツィといった著名人のセッションの会場も閑散としていたのである。こういった著名人も参加者の少なさにショックを受けたと思われる。
その理由として考えられることは、景気の後退から各企業ではコスト削減が図られているため、参加者はパフォーマンスに結びつく情報をコンファレンスから得たいと思っていたのかもしれない。今回のコンファレンスから、事前にハンドアウト(講演資料)をASTDのサイトからダウンロードできるので、自分に役に立ちそうな内容かどうかを事前に参加者がチェックできるようになった。参加者の三分の一程度の人は、会場にくるときにすでにハンドアウトを持っていたようだ。(会場ではコストの節約のためか、ハンドアウトは2ページまでと制限されており、それすらもほとんど用意されておらず、もちろん実際にプレゼンされているスライドの資料はその場では貰えない)そういったことから、人材開発のグルたちのコンセプトを聞いても、現実の複雑な事態に対応することができないと考えられたのではないだろうか。
2010年のASTD国際会議への期待
今回のASTDコンファレンスの参加者の皆さんの反応を伺うと、今年は会場が寂しいし、ピンとくるものが少なかったという声を聞く。参加者の期待に充分応えられているとはいえなかったのではないだろうか。
それでは、ASTDは今後どうなっていくのだろうか。ものごとは正反合という形で進化していくということや、仮説検証で改善されていくということが自然な発展のプロセスだとすると、次回は大きな変化が期待できそうである。
今回のASTDコンファレンスは、研究者や参加した人々に違和感を与えるリフレクションの機会になったのではないかと思う。このリアルな現場からズレてきいる感覚を人材開発のセンスの鋭い専門家たちはきっと深く探究するに違いない。ASTDの会長が冒頭の挨拶で言っているように、いままでの人材開発のモデルの否定から、カオスが起き、そこから新しいものが生成するのである。そういった意味では、大きな社会経済的変化の中で、人材開発や組織開発に携わる者たちが、いままでの枠組みを否定せざるを得ないカオスに直面した状態が今回のコンファレンスかと思う。
来年の5月16日から開催を予定しているシカゴのコンファレンスでは、素晴らしい新たな枠組みが紹介されることを期待したいと思う。
ASTD2009エキスポジション
本年のエキスポの概要は以下のとおりであった。
・出展社数
ASTD2009プログラムガイドによると、本年度のエキスポでの展示は308社であった。
・展示日
月曜日 9:30a.m.-2:15p.m.
火曜日 9:30a.m.-4:00p.m.
水曜日 9:30a.m.-1:15p.m.
エキスポの概要
本年度のASTDのEXPOにおいては、68のカテゴリー(重複カテゴリー含む)で308のブースが出展されていた。昨年行われたASTD2008の出展社数が415であったので、約25%減である。規模が縮小された直接的な背景としては、経済危機の打撃を受けたことや新型インフルエンザの影響で特にアジア系のベンダーが出展を控えたことなどが考えられる。
ここ数年の傾向として、出展社やサービスの内容から、エキスポのトレンドや特徴を見出すことが難しくなってきている。今年のエキスポは特にその傾向が強まっており、取り扱っているテーマやサービスの内容を聞いただけでは、各社の差が見出せなくなってきている。コンファレンスのセッションの中では、インフォーマル・ラーニングやセールス・トレーニングなどのテーマがよく取り上げられていたが、特にその辺りに特化したような新規的なサービスを打ち出しているベンダーなどもあまり見当たらなかった。日本から参加した人々に感想を聞いてみても、「各ベンダーの差があまり見出せなくなり、全体としてのメッセージが見えづらい」といったものが多かった。来訪している人の様子を見ても、具体的なサービスを探しに来ているというよりは、見学に来ているといった人々が多いように見受けられた。
そうした背景もあってか、会場の雰囲気としては、下記の写真にもあるように、人の数が全体的に少ない印象を受けた。コンファレンスのセッションの合間の時間帯には人の数も増えていたが、セッションが始まると多くの人々がエキスポ会場を後にし、セッションに向かう様子が見受けられた。
過去のエキスポは、自分たちのニーズにマッチした製品やサービスを探し、購買検討を行う場であったといえる。しかし、近年では、購買検討のための情報は他でも得られるため、そうした位置づけは少なくなってきている。むしろ、出展することで既存顧客とのリレーションを深めたり、社名を認知し続けてもらう場としての位置づけが高まってきているともいえる。このようにエキスポに出展する企業と訪問する人々との関係性が変わってきている中、今後、エキスポ自体の意義なども問い直されてくるかもしれない。