組織変革フォーラム2016 開催報告
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組織変革フォーラム2016 -継続する組織変革-
当日は127名の多様な方々(経営者やマネジャー、人事・人材開発担当者、人や組織に関わる専門家)にご参加いただき、組織変革に関する調査やトレンドの情報提供、また変革に挑戦し続けている登壇企業3社による変革ストーリーの共有などをもとに、参加者全員で「継続する組織変革」の価値や重要性、また実践する際のポイントなどについて探求を深めました。
以下に、当日の様子をレポートします。
オープニングスピーチ :株式会社ヒューマンバリュー 阿諏訪博一
「組織変革に関する調査やトレンドについての情報提供」
フォーラムは、ヒューマンバリューの阿諏訪博一によるオープニング・スピーチ「組織変革に関する調査やトレンドについての情報提供」から始まりました。
オープニングスピーチでは、生成的変革アプローチがますます求められている背景を、ビジネスに関わる変化のトレンドをもとに話した後、生成的な変革を実際に継続していく上でのポイントが紹介されました。
具体的には、組織変革を進めていく中で起きる小さな変化を捉え、それを育てていく重要性や、変革の中で生まれるギャップが引き起こすブレーキを取り除く際の具体的なアプローチ方法、また生成的な変革を効果的に推進していく上でのポイントなどについて、Ocapi※の概念やデータ解析から見えてきた特徴を踏まえながら紹介されました。本スピーチは、この後に続く組織変革ストーリーの共有や全体ダイアログにもつながる内容で、会場にいる参加者は時折メモを取りながら、自身がこれまで取り組んできた変革の取り組みを思い返したり、これから新たに推進していく取り組みに想いを巡らせているようでした。
オープニング・スピーチの後は、登壇企業3社からそれぞれの組織変革ストーリーの共有がありました。
はじめに、共に変革の取り組みを伴走しているヒューマンバリューのメンバーが、ナビゲーターとして変革の取り組みの全体像を紹介しました。その後、登壇企業の方から実際の組織変革ストーリーやそこに込めた想いなどをお話しいただき、最後に、会場にいる参加者一人ひとりがグループに分かれ、それぞれのストーリーから伝わってきた話し手の想いや自分自身が感じたことなどを語り直す(リストーリー)という流れで進んでいきました。1つ目は、株式会社リクルートマーケティングパートナーズの山口文洋氏による組織変革ストーリーでした。
組織変革ストーリーⅠ:株式会社リクルートマーケティングパートナーズ 代表取締役社長 山口文洋氏
一人ひとりのありたい姿を起点にする企業文化の創造
「リクルートグループの今があって、未来があるのは、トップダウンではなくボトムアップの企業文化を維持し続けたからこそ」というメッセージから始まった山口氏のストーリーテリングでは、リクルートマーケティングパートナーズ(以下、RMP)が設立された当時の社内の状況や、そこから社員全員で会社のビジョン(ありたい姿)を創造していったストーリー、さらにはありたい姿の実現に向けて、着実にステップを踏みながら成果が出せる組織を目指して現在取り組んでいる「守・破・離」の取り組みなどが紹介されました。
「守・破・離」とは、業務生産性向上を目的としたワークスタイル変革(守)、創造性発露のきっかけを社内・外との交流から生み出すことを目的としたOne RMP PJ(破)、そして創造性の発露を目的とした新規事業提案制度New Ring
社員一人ひとりのWILLの発露から、新しい価値創造を数多く生み出していくことを目指し、組織変革と事業変革を同時に行い続けることを大切にされている山口氏の取り組みストーリーからは、明確なビジョンや目指している姿が伝わってきました。
その後の参加者によるリストーリーでは、といった声が聞かれました。組織変革と事業変革の両方の実現に向けて、強いコミットメントをもって社員全員による変革に取り組まれている山口氏のストーリーから、参加者の皆さんは、多くの勇気や意志のようなものを感じ取られているようでした。
「トップダウンではなく、社員全員でビジョンを考え、変革を進めることを大事にされていて、そこが素晴らしいと思った…」
「ビジョンだけをつくって終わりではなく、具体的に事業や仕組みを変えていったところがすごい…」
「組織変革と事業変革をイコールで考えていることが真髄なんだなと…」
「伝わってきたのは、『文化にするんだ』という覚悟…」
といった声が聞かれました。組織変革と事業変革の両方の実現に向けて、強いコミットメントをもって社員全員による変革に取り組まれている山口氏のストーリーから、参加者の皆さんは、多くの勇気や意志のようなものを感じ取られているようでした。
組織変革ストーリーⅡ:新生フィナンシャル株式会社 コーポレート・スタッフ部門 組織開発部 ディレクター 小杉泰幸氏
2030年ありたい姿~心から願う未来を実現するために」
2つ目は、新生フィナンシャル株式会社の小杉泰幸氏による組織変革ストーリーでした。
ビジネス環境の変化を受け、変革の必要性が高まっていた中、変革の旅路に足を踏み出した経緯や当時の気持ちの紹介から始まった小杉氏のストーリーテリングでは、様々な組織変革の取り組みを自分たちで考え、実践し、現場の社員に寄り添い、率直な声を聞きながら試行錯誤を繰り返し、取り組みを進化させ続けていった物語が共有されました。
また、ストーリーの最後には、今後の取り組みについてはまだ先が見えない状況の中にいるとしながらも、
「こんなぼや~んとした感じをこれからも続けていくのも楽しいのかなと思っています」
「今は新生フィナンシャルというものをいろんなところに発信していきたいと思っている」
といった率直な今の心境や、といった一連の取り組みを通して生まれた小杉氏自身の変化について等身大の言葉で語られ、会場内に共感が広がりました。
小杉氏からのストーリーテリングを受けてのリストーリーでは、
「答えのない中で試行錯誤し、やり続けることが大事だと思いました…」
「組織変革とは終わりのないものだな…」
「飾らず、等身大で取り組んでいて、彼の率直な人柄が組織を変えていったのかな…」
といったことが会場内で話され、取り組みをきれいに計画して行ったり、よく見せようとはせず、試行錯誤しながらも等身大の自分で取り組みを推進し続けることの大切さなどが、参加者それぞれの言葉で話し合われていました。
組織変革ストーリーⅢ:日産自動車株式会社 プラットフォーム・車両要素技術開発本部 車体技術開発部 部長 齋藤裕氏
自分が変わる・仲間と変わる・組織も変わる~想いが伝播する変革の旅路
最後は、日産自動車株式会社の齋藤裕氏による組織変革ストーリーでした。
小さい頃から日産車が好きだったという齋藤氏が、日産自動車に入社してからの日々の葛藤や仲間との関わりの中で感じていたことなどから始まったストーリーテリングでは、トップや上司からの指示や命令ではなく、社員一人ひとりの純粋な「〇〇したい」という想いから取り組みを始め、自然な形で周りの仲間を巻き込むことで、自然発生的な創発の取り組みが部門全体に広がっていったストーリーや、海外へ異動された後もご自身なりに想いをもって変革の取り組みを継続していった話が共有されました。
「大変さだったり、忙しさだったり、リスクがあるときに、まあいいや、ちょっとやってみようと思ってやる。そういう積み重ねだけだと思う…」
「行動ができていなくても、やめたと思わなければ、それは続いている。大きな成果は期待していない、結果はついてきているもの…
といったメッセージを、ゆっくりとした口調で自然に語りかける齋藤氏からは、純粋な想いから取り組みを始め、気負わず、自然に継続し続けることの可能性が伝わってきて、会場全体は温かくて柔らかな、それでいて地に足の着いた落ち着いた空気に包まれました。
齋藤氏からのストーリーテリングを受けてのリストーリーでは、
「自然発生って理想的…」
「ネットワークがすごい。それぞれのつながりを大切にされているんだろうな…」
「想いがあるから人が集まる、仲間が集まる…」
「フォーマルに何かをやることで、事を起こそうというとらわれがあった…」
といった声が聞かれ、参加者それぞれが組織の理想の姿に想いをはせるなど、組織変革に対する捉え方の広がりが会場内に生まれていたように思います。
全体ダイアログ
組織変革ストーリーの共有の後は、登壇企業3社からのストーリーを受けて感じたこと・気づいたこと・発見したことなどをもとに、会場に集った参加者全員でワールドカフェ形式による話し合いを行いました。そこでは、継続する組織変革のポイントや大切にしたいこと、また今後自分自身が変えていきたい行動や新たにチャレンジしたいことなどについて、参加者の皆さんそれぞれが探求を深めました。
話し合いの中では、
「ぐるぐる回ってしまったときは、ありたい姿に立ち戻る…」
「外から変革を推進しても、そこには変革をさせる側・させられる側が生まれてしまう。
生身の人間がそこにいることを忘れないことが大切…」
「今みなさんと、ここで話しているこのような話し合いを組織内で続けていくことが、
組織変革につながるのではないか…」
「何でいま組織変革に取り組んでいるのか、どういうことを目指しているのかといったような、
組織変革をする意味を問い続けていきたい…」
「もやもやとか、空気とかを見ていきたい…」
といった声が聞こえ、組織変革ストーリーから流れ出た意味やポイントが溶け合い、組織変革へ取り組む際の新たな意味や可能性、チャレンジなどが創発された時間でした。
パネル・ダイアログ
全体ダイアログの後は、あらためてストーリーテラーの方々に壇上へ上がっていただき、ヒューマンバリューの川口大輔がモデレーターを務める中、パネル・ダイアログが行われました。
パネル・ダイアログでは、最初から変革の取り組みの全体像を計画して、それに沿って取り組みを進めてきたわけではなく、やりながら様子を見つつ考えながら進めてきたところや、仲間といろいろ議論をする中で「結局、自分たちは何がしたいんだ?」といった問いに正面から向き合い、そこから未来が拓けていったといったところは、3社のストーリーの中で似通っているかもしれないという話が上がりました。
その他には、想いをもった社員が組織の様々なところで自己創発的に生成的な取り組みを進められるように支援するには、社員の純粋な想いを発露できる「空気」を組織内につくっていくことが大切かもしれないといった話が出ました。また、組織変革の成果をどのような形で見せるかという問いに対しては、組織的に「ゆるさ」をどう許容できるかがポイントになるのではないか、そのためには組織変革を進める際の知識が必要で、その知識があれば後は待つだけといった意見も話し合われ、登壇企業3社のストーリーや想い・考えが混ざり合いながら、探求的なダイアログが進んでいきました。
その他には、想いをもった社員が組織の様々なところで自己創発的に生成的な取り組みを進められるように支援するには、社員の純粋な想いを発露できる「空気」を組織内につくっていくことが大切かもしれないといった話が出ました。また、組織変革の成果をどのような形で見せるかという問いに対しては、組織的に「ゆるさ」をどう許容できるかがポイントになるのではないか、そのためには組織変革を進める際の知識が必要で、その知識があれば後は待つだけといった意見も話し合われ、登壇企業3社のストーリーや想い・考えが混ざり合いながら、探求的なダイアログが進んでいきました。
お互いの関心やもっと探求したいことを率直に話し合いながら、組織変革に取り組む新しい意味や今後のチャレンジなどが創発されたこのパネル・ダイアログの時間は、会場にいる参加者が自分の姿を登壇者に投影させ、会場全体が一体となってダイアログをしているような、探求的な時間でした。
クロージング
最後のクロージングでは、ヒューマンバリュー代表取締役社長の兼清俊光が本日のフォーラムの感想を述べ、その後チェックアウトをして終了しました。
チェックアウトでは、
「自分がなぜ今のこの仕事をしていて、これからどうしたいかをあらためて
問い直すことができた機会になった…」
「みんな同じ悩みをもってやっている。正解はないので、今日のようにこれから仲間と
話し合いながら、進めていきたい…」
「まずは自分の目の前のチームを大切にしたい…」
「自分も枠組みを取っ払っていきたい…」
といった声が参加者から聞こえ、本フォーラムに参加しての学びや気づき、またこれから先の未来に向けての意志のようなものが、会場に溢れていました。
最後に…
今回の組織変革フォーラム2016では、継続する組織変革の実践やポイント、またこれから先の日々の取り組みの中で自分自身が大切にしていきたいことなどを、組織変革に関する調査やトレンドについての情報提供や登壇企業3社による組織変革ストーリー、さらには会場に集った参加者の経験や気づき・発見をもとに、複層的に探求し合う場になりました。また、これまで組織変革に取り組んできた方々は、自らが組織変革に取り組む意味や意義を問い直し、新たな意味を見出した時間になったかもしれません。本フォーラムにご参加いただいた皆さんやこの開催レポートをご覧になった方々が、それぞれの気づきを胸に、これから先少しでも生成的な取り組みを実践し続け、そこでの発見や学びを楽しみながら、サスティナブルに価値を生み出し続けられることを願っています。