ミニ・フォーラム 多様な働き方を実現する組織風土を醸成するには ~キャリアトランジションにおいて、”本人ができること” ”周囲ができること”~
ヒューマンバリュー半蔵門オフィスにて、ミニ・フォーラム「多様な働き方を実現する組織風土を醸成するには~キャリアトランジションにおいて、"本人ができること""周囲ができること"~」を2015年10月に開催しました。
当日は、各企業のダイバーシティ推進のご担当の方をはじめ、2015年1月より実施した、育児休暇明けで新たな環境への適応を模索している方を対象とした「オープンアップ・ザ・ドア」トライアルコースの受講者等、全部で31名の方がご参加くださいました。当日は、参加者一人ひとりが「多様な働き方」というテーマを自分事として捉え、率直で幅広い意見や想いが話され、共有されました。
そういった中から、私たちが心から望む未来の働き方の実現に向けた取り組みのポイントや、取り組むに当たって大切にしていきたい価値等が生み出され、「テーマを自分事として捉え、本音で語り、考え、アイデアを生み出す」というプロセスの大切さが実感されたように思います。
ご参加くださった皆さまには、厚く御礼を申し上げるとともに、「多様な働き方の実現」に向け、これからも一緒に歩み続けていくことができればと考えています。
関連するキーワード
ミニ・フォーラムの概要
ねらい
・これまでヒューマンバリューが、多様な働き方の実現に向けて取り組んできた「トライアルコースの実施」や「企業インタビューの実施」からわかったことについて紹介する
・参加者は、それらを参考にしながら、企業や皆さまの問題意識や想いと結びつけ、共有と探求の話し合いを行う
・対話や探求を通じ、多様な働き方の実現に向けた、今後のアイデアや取り組みの仮説を一緒に生み出す
プログラム
・オープニング
・「多様な働き方」に関するヒューマンバリューのこれまでの取り組みのストーリーテリング
・「多様な働き方」に関する参加企業の取り組みの現状
・「オープンアップ・ザ・ドア」トライアルコースから明らかになったポイントの紹介と、参加者によるグループダイアログ
・「企業インタビュー」から明らかになったポイントの紹介と、参加者によるグループダイアログ
・ワールド・カフェによる「多様な働き方の実現に向けた取り組み」についての話し合い
・クロージング
ミニ・フォーラムで話し合われた内容
2015年1月~3月にかけて実施した、「オープンアップ・ザ・ドア」のトライアルコース(※)では、トランジションに直面している当事者が、あらためて自分自身の今を捉え直し、自分らしい暮らし方や働き方の実現に向けた実践と探求を、仕事や日常生活において行ってきました。
これらを通じて明らかになった、多様な働き方を実現するためのポイントを紹介しました。
・自分を見つめ、周囲と支え合える「サードプレイス」をもつ
・一歩を踏み出し、そこから生まれる変化を実感する
・自分自身が変化を実感することで、周囲や自分自身にさらなる変化を生み出していく
・自分自身を俯瞰する力を高める
・「ワーク」と「ライフ」を融合して捉える
上記の紹介を踏まえて、参加者が自らの体験や想いをもとに対話を行いました。
トランジションに直面し、「ワーク」も「ライフ」も環境が大きく変化すると、当事者は、時間的にも精神的にも忙しさに焦点が当たってしまう傾向があるようです。そうした状況の中では、職場でも家庭でもない空間であらためて自分自身を見つめ直す「サードプレイス」の大切さについて、多くの参加者が共通の認識をもっていました。たとえば「オープンアップ・ザ・ドア」トライアルコース参加者にとっては、トライアルコースの場がサードプレイスとなっていたり、それ以外の方も、ご自身を振り返って考えると、たとえば好きなエステやジムに通う時間をくくり出していたことが、サードプレイスをつくっていたということだったのかもしれないと気づかれた方もいらっしゃいました。
また、大きな環境の変化に直面すると、今、目の前で起きていることへの対処に焦点が当たりすぎ、新たな一歩を踏み出そうとする力が高まりづらい傾向もあるようです。しかし、そうした状況の中でも、実現したい状態を描いた上で無理のない小さな一歩を踏み出してみると、自分自身が変化したり、周囲に変化を及ぼしたりしていることが実感でき、そのことが、さらなる変化を生み出すことにつながっていくことが、「オープンアップ・ザ・ドア」トライアルコースの実施を通じてわかりました。
また、サードプレイスなどで自分自身をあらためて見つめ直し、自分が大事にしたい本質的な価値などが見出されてくると、前向きな気持ちになるなど、まずは精神面や「ライフ」の面の充足感が高まってくるようです。そのことが自然と「ワーク」にも良い影響を及ぼし、モチベーションや仕事の効率の高まりにつながるということを、トライアル参加者の多くの方が実感していました。
(※)「オープンアップ・ザ・ドア」トライアルコース
育児休暇明けの女性社員を対象としたコース。仕事や家庭を含めた大きな状況の変化に適応し、自分で納得できる働き方や暮らし方を生み出すための「変容する力」を高めるプロセスを体験した。2015年1月~3月末に実施。
「企業インタビュー」から明らかになったポイントの紹介と、 参加者によるグループダイアログ
2015年5月より、企業が行っている「多様な働き方に対する取り組み」の実態を捉えるため、ダイバーシティや多様な働き方の推進等を担当されている人事の方などにインタビューに伺いました。そこから抽出されてきた、人事やダイバーシティ推進担当者から見た、社員が自分らしく生き生きと働くためのポイントについて紹介しました。
・多様な働き方に関する各企業の制度や取り組み、抱える課題は、企業の状態や戦略等によってさまざま
・ただし、取り組む上で大切な、共通する観点がいくつか存在する
・働く一人ひとりや組織のありたい姿は、「お互いが支え合い、価値観を生かし合い、一人ひとりがステップアップしながら活躍している状態」「組織の関係の質が高く、『お互い様文化』が醸成されている状態」
育児をしながら仕事に取り組む方だけではなく、介護に直面している、あるいは自分の価値観に合う働き方をしたいなど、働き方の多様化は今後ますます高まっていくといわれています。多様な働き方の実現に向けては、誰かが誰かをカバーするといった一方的な関係ではなく、相互の許容や相互理解を図りながら、お互いにサポートし合えるような「お互い様文化」をつくっていくことが大切だということがわかりました。
その後のグループダイアログでは、「お互い様文化」を醸成していくには、スポット的に状況を捉えるのではなく、時間軸を伸ばして状況を捉えることが大切だといった声や、具体的にはメンバー同士がどのようなコミュニケーションをとったらよいかについて、さらに探求したいといった声などがあがりました。
ワールド・カフェによる 「多様な働き方の実現に向けた取り組み」についての話し合い
ここまでの話し合いを、さらに全員でより深く探求するため、ワールド・カフェの手法を用いて話し合いを行いました。
ここでは、私たちが望む未来の働き方や、それを支える組織や社会のありたい状態、それに向けて私たちができることをテーマに話し合いました。
話し合いでは、「サードプレイス」「お互い様文化」「一人ひとりの想いを尊重し合う」「人々の信頼関係」「自由と責任」「評価制度」「リモートワーク」「地域での子育て」「職場で話し合いの時間を設けることの大切さ」等々、幅広い観点からの話し合いが行われていました。特に、「お互い様文化」を組織でどうやって醸成していくかということに関しては多くのグループで話し合われており、「多様な働き方」の実現に向けては、当事者本人だけではなく、組織の中で一人ひとりが自分事としてテーマを捉え、お互いの理解や信頼関係を高め合いながら、皆で取り組んでいく文化が大切だということが浮かび上がってきたように思います。
ミニ・フォーラム全体を通じて
今回は、さまざまな企業から、企業でダイバーシティ等を担当されている方、「オープンアップ・ザ・ドア」のトライアルコースに参加された方など、多様な方が集い、それぞれの異なる経験や考えから率直に意見を述べ合うことで視座を高めながら、対話が深まっていきました。こうした話し合いが実現できた1つの要因として考えられるのは、集まったすべの人が、自分事としてこのテーマを捉え、お互いを尊重しながら、実現したい状態に向けて、より良い一歩を踏み出すための話し合いができたことが挙げられると思われます。
各企業が、「多様な働き方」の実現に向けて取り組んでいく際も、リラックスできる空間で、多様な立場や観点を持ち寄り、お互いの理解を深めながら話し合えるような場やプロセスが大切になってくることを体感したような時間だったように感じています。
取り組み事例
・個人向けコース:一人ひとりの変容する力「アイデンティティ・キャピタル」を高めるオープンアップ・ザ・ドア〜新たなステージで自分らしく生きるために〜
・企業内ワークショップ:メンバー間の関係性や相互理解「ソーシャル・キャピタル」を高める全員参加型ワークショップ