ラーニング・オーガニゼーション最新事例3:OST(Open Space Technology)
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ラーニング・オーガニゼーション最新事例3:OST(Open Space Technology) ジェネレーティブ・ファシリテーションの動向
組織環境の複雑性・未来の不透明性が高まる中で、より組織能力を高める話し合いの技術が求められている。それには、従来の問題解決型のファシリテーション手法では十分ではなく、今後は「相互作用を促す場をデザインし、新たな方向性を生成する」ファシリテーション手法が必要になってきているのである。
具体的には、オープンスペース・テクノロジー、フューチャー・サーチ、アプリシエイティブ・インクアイアリー(AI)といった手法がこれにあたる。こういった手法を私どもでは「ジェネレーティブ・ファシリテーション」と包括して呼んでいる。
今回の海外調査では、実際の組織内での活用事例やこれらの手法の提唱者へのインタビューを通じて、従来の一般的ファシリテーションとの違いを検証した。
本稿では、オープンスペース・テクノロジー(以下、OST)の提唱者であるハリソン・オーエン氏のインタビューに基づいてOSTを紹介し、「ジェネレーティブ・ファシリテーション」手法を使った会議のイメージを伝えたい。その上で、従来のファシリテーションとの違いを明らかにする。
OSTは1985年にオーエン氏によって開発され、今日では欧米を中心に世界的に活用されている。このコンセプトは「会議の合間にある休憩時間:コーヒーブレーク」(日本でいう「たばこ部屋」)でしばしば起こるような、自由で本音ベースのコミュニケーションを意図的に生み出すことを、会議の主たるねらいにしてしまうというものである。
OSTを使った会議は次のように進められる。
・ 会議のテーマに関係するすべての人々に会議への招待状を出し、問題意識の高い人に自由に
参加してもらうようにする。
・会議全体を通じた大きなテーマはあるものの、あらかじめ決められたアジェンダはなく、
与えられた1~3日間で、参加者が提示し合ったアジェンダを話し合う。また、時間や場所は
参加者によって自律的に設定され、セッションの運営はアジェンダを提示した参加者自らが
行う。
・あがってきたアジェンダはすべて話し合われるように、複数のセッションが同時に開催
される。話し合いが深化し、多様な視点からの理解が進む中で、予定される話し合いの
内容・時間・場所が変更される場合があるが、それも参加者の判断に委ねられる。
そういったプロセスでアジェンダそのものが進化し、洗練されていく。
・ 「2足の法則」という法則があり、各セッションへの出入りは自由である。その分各人に
徹底した主体性とセッションへの貢献を求める。
・ 議事録・壁新聞を通じて、各人が参加していないセッションでも話し合いの内容を共有し、
最終的に、話し合われた内容がすべて記録された冊子が渡される。
OST を使った会議を行う目的としては、組織の危機的な状況から立て直しや戦略立案のために活用している例がある。また企業によってはAIなどの他の手法も組み合わせて会議を行っている例も多い。今後は、すでにどこかに存在する答えを見つけるためではなく、これまでになかった新たな方向性や答えを場の中から生成することをねらいとしたファシリテーション技術の重要性が高まってくるものと思われる。
「人材教育」(株式会社JMAM人材教育)2005年1月号掲載「ラーニング・オーガニゼーションの米国最新事情」より抜粋