シミュレーションのいろいろな顔
カンファレンスセッションの紹介:Tech Learn2001年
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アクセンチュアではシミュレーションを社内のコンサルタントのスキルを育てる力強い道具であると考えています。しかし「シミュレーション」という言葉は単純なソフトウェア・シミュレーションから複雑でリアリティを持ったフライト・シミュレーターまで幅広い学習体験を指し、混乱を招いています。このセッションでは違ったタイプのシミュレーションのフレームを規定し、何が可能で何が不可能かを見ていきます。いくつかのアクセンチュアで実際に行われているシミュレーションを見てもらいます。このセッションの後以下のことが可能となります:
・何がシミュレーションを教育的なものにしているのか。
・異なるタイプのシミュレーションの定義
・どのタイプのシミュレーションがどのコンテンツあるいはラーニング・アウトカムに対して役立つのかを記述する。
概要
Indeliq社のシミュレーションのデモンストレーションを随所に織り交ぜながら、シミュレーションの定義、効用について解説したセッション。300人ほどの会場の6割ぐらいが埋まっていた。
内容
導入
46の国に75000人の従業員を抱えるアクセンチュアは、従業員向け、及びクライアント向けにシミュレーションを提供してきたバックグラウンドがある。
シミュレーションに関する引用
経験は最も良い教師であるが、同時に最も高くつくものである
Eラーニングの専門家は最近シミュレーションについて多くを語るが、誰一人同じことを指しているようには思えない
よってシミュレーションとは何なのかをアクセンチュアとしてまとめてみることにする。
シミュレーションを行う理由
シミュレーションを行うのには次の4つの理由が考えられる。
1.実務での失敗の前に練習することができる。
2.専門家の育成を加速できる。
3.特定の知識やスキルを統合した特別な経験を提供することができる。
4.プロセスと原理をより深く教えることができる。
シミュレーションの定義
アクセンチュアではシミュレーションを次のように定義した:
シミュレーションとは学習者が意味のあるタスクをある特定の状況で行い、それらのアクションに対する連続的なフィードバックを受け、同時にサポートするリソースへのアクセスをも持った環境での学習体験である。
シミュレーションのタイプ
シミュレーションは以下の6つにタイプ分けできる。
1.Real Time
2.Interval-Based
3.Deliverable-based
4.Interactive Story
5.Software Simulations
6.Near Sims
1. Real Time
リアルタイムシミュレーションとは飛行機のフライト・シミュレーターのように実際に試せるものである。またリアルタイムシミュレーションの特徴としては以下の点が挙げられる。
・信頼性が高い。
・何度も繰り返しできる。
・リアルタイムにパフォーマンスを行うことができる。
・決断を下すあるいはアクションを起こすタイミングが重要となる。
・すぐに現実性に富んだフィードバックを受けれる。
・コーチングや内省は一つのセッションとセッションの間に行われる。
これらによりリアルタイムシミュレーションは、以下の時に使われる。
・学習目的がタイミングと関係しているとき
・タイムプレッシャーの中での決断が求められるスキルを習得するとき
・繰り返し行われるスキルを習得するとき
一方で開発コストが非常に高くつくなどの問題点もある。
2. Interval-Based
あるシステム環境の中で決断を下すものである。例えば、マーケティングのプランをどう立てるか、あるいはファイナンスにおける決断をどう下すかといったテーマで、受講者が与えられた情報をもとに、戦略をたてていくものである。
その特徴としては以下の点が挙げられる。
・レポートとインタビューに基づいたデータが用意される。
・まずデータを分析し、決断を下し、シミュレーションを走らせると、結論をみることができるようになっている。
・ある特定のアクションがシミュレーションによって加速度的に学ぶことができる。
・コーチングと内省は分析や決断を下すときに行われる。
Interval-Based シミュレーションを用いるのは以下の時である。
・ビジネスを運営するなどあるシステムがどのように動くかのプロセスを学習するとき
・データを何度も解釈するとき
またポイントとしては、フィードバックを受けるのに作業を中断しなければいけないなどが挙げられる。メジャーなベンダーとしてはSMGなどがある。
3. Deliverable-based
特定の仕事に関してのプロセスを学ぶシミュレーション。特徴としては以下の点が挙げられる。
・面白いストーリーが必要となる。
・たくさんのレポートやインタビューによるデータが必要となる。
・学習ポイントが明確であり、エキスパートのコメントが強調されている。
・コーチングと内省は分析や決断を下すときに行われる。
また使用するのは以下のときである。
・ワークプランを作成したり、提案をするなどといった特定のスキルをトレーニングするとき
・コンセプトや原理を問題の分析を通して応用するとき
またポイントとしては、受講者のモチベーションを保つためにインタラクティブなストーリーやインターフェイスが必要であることなどが挙げられる。
4. Interactive Story
ソフトスキルを学ぶためのケーススタディを中心としたシミュレーションである。一連のケースの中で様々な決断を下し、それに対するフィードバックを受けることができる。その特徴としては以下の点が挙げられる。
・ストーリーの構成が全てである。
・難しい選択肢が与えられ、その中で何を言うかあるいは何をするかを決断する。
・コーチングはキーとなる失敗をしたときに行われる。
Inteactive Storyが行われるのは以下の時である。
・インターパーソナル・スキルを学ぶとき
・すぐに結果が出る原理を応用したいとき
・1度にひとつかふたつの指標にフォーカスするとき
またポイントとしては、学習ポイントを持ったストーリーを作成するのにスキルを要するなどが挙げられる。
5. Software Simulations
ソフトウェアの扱い方を画面上でシミュレーションしながら学ぶものである。
質疑応答
シミュレーションが有効であるというデータはあるのか
アクセンチュアの中でデータとしてはまだない。書籍”Training and Retraining”の中にデータがあるのでそちらを参照して欲しい。
所見
シミュレーションの定義を具体例を通して、わかりやすく説明していたため、会場の評判も良かったようだ。ただ、シミュレーションのデモを行うと必ずといっていいほどコストの質問が出ているようで、(Indeliqでは何十万~億単位と物によって幅広い開発費)やはりインタラクティブなコンテンツとコストはトレードオフの関係にあることはある程度否めないと感じた。