シリーズ:エンゲージメントストーリー第2話:「一泊二日の自費の社内ミーティング」
いま、エンゲージメントが注目されています。
エンゲージメントとは何かをお考えいただくために、実際に筆者が体験した4つのストーリーを紹介します。
この4つのストーリーが、働くこと・働く場・働く仲間といったものについての考えを整理する上でお役に立てばと思います。
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第2話:一泊二日の自費の社内ミーティング
自費&有給休暇を使って行われた合宿・・・
製造業のメンバーが500名近くいる部門が、一泊二日の合宿を有志たちによって平日に実施しました。実は、この合宿、会社の費用ではなく、自費で、しかも有給休暇を取って集まったのです。
参加した仲間たちは30名以上、その部門のトップもいます。管理職もいます。一般社員もいますし、契約社員も、派遣社員の方たちもいます。また、この部門のメンバーでない人も、数名います。その人たちは、部門は違うものの、彼らと同じ想いと目的意識を持った人々です。
もともとのプランは、500名近いメンバー全員が集まって、一泊二日の合宿をする計画でした。その合宿では、「自分自身のありたい姿・ビジョンを描き、それを皆で共有し、共有化されたビジョンを実現するために、一人ひとりができることを発見する」という趣旨のものでした。昨年も同じような合宿を実施しています。
でも、100年に一度あるかないかの金融恐慌、景気の悪化から、予算化されていた合宿費用をそのまま使うことが、本当に’正しい’ことだろうか? という疑問が起こりました。
そして、計画を修正し、100名ぐらいに別れて、4回に分けて実施しようということなりました。
そうして計画を進めていましたが、景気の悪化は、その会社の収益をさらに厳しいものにしていきました。
すると、分けて実施したとしても、それは本当に’正しい’ことだろうか? という探究が、さらに起こりました。
そして、「代表の有志が100名ほど集まって実施し、その内容と情熱を持ち帰って、仲間と共有しよう」という方向へさらなる軌道修正が起きました。
でも、さらに会社の業績は厳しくなりました。そこで、ずっとこの取り組みの検討をしてきた仲間たちは、’正しい選択は、いま実施しないこと。会社のコスト予算を削減すること’という結論に達したのでした。
これで合宿は流れたと思ったら、予定した日に、彼らは、有志たちと一緒に、有給休暇を取り、自費で、二日間の合宿を実施したのです。
ほんとうにありがとう・・・
合宿の最後、参加した全員が輪になって座りました。そして、順番を決めずに、話したい人から「二日間の率直な感想」を話すチェックアウトと呼ばれるものが始まりました。
最初に話し始めた人は、契約社員の女性でした。「みなさん、ほんとうにありがとう・・・」そういったとたん、彼女の目から大粒の涙が頬をつたい始めました。
彼女は、その月の末日で契約が終了する人でした。にもかかわらず、この合宿に自費で参加していたのです。そして、チェックアウトを続けました。
私は、みなさんと一緒に仕事ができて本当に幸せでした。こうやってお互いのことを考え、自分と仲間たちがいきいきとその人らしく働けるように本気で考えている仲間と出会えたこと、そういう仲間と一緒に働くことができた、この経験があれば、私はどこへ行っても、自分らしく頑張ることができます・・・
周りの仲間たちの目にも涙が溢れていました。
また、他の方のチェックアウトでは、次のようなものがありました。
私は、中途採用で、7年前にこの会社に来ました。7年間を思い返すと、業績が良くてボーナスがたくさんもらえたときもありました。管理職にもなれました。いまは、給与もボーナスも減りました。この先は、もっと減りそうです(笑い)。でも、自分はこの会社に来て、本当に良かったと思っています。こんな仲間たちと一緒に未来を考えて、本気で取り組めている、いまがいちばん幸せです。ぜったい僕らは素晴らしくなれます・・・
彼らは、どのようなかかわりをしているのだろう・・・
契約期間が切れて会社を去ろうとしているときに、仲間と一緒に未来を考えることができる・・・、業績が厳しく給与が減っているときに、いまがいちばん幸せと受け止め、未来を信じ切ることができる・・・、彼らは、何を大事にし、どのようにしてかかわっているのでしょうか・・・。
また、この合宿には、部門長も、管理職も、一般社員も、契約社員も、派遣社員もいました。役職や雇用形態の違う人々が、お互いをどのように受け止めているのでしょう、そしてどのようなかかわりをしているのでしょうか・・・。