シリーズ:エンゲージメントストーリー第4話:「B社のエンゲージメントへの5年間の歩み」
いま、エンゲージメントが注目されています。
エンゲージメントとは何かをお考えいただくために、実際に筆者が体験した4つのストーリーを紹介します。
この4つのストーリーが、働くこと・働く場・働く仲間といったものについての考えを整理する上でお役に立てばと思います。
関連するキーワード
・シリーズ:エンゲージメントストーリー第4話:「B社のエンゲージメントへの5年間の歩み」
第4話:B社のエンゲージメントへの5年間の歩み
B社の現在
いまをどう認識するか、それは個人と組織の捉え方・枠組み(メンタルモデル)によってさまざまです。
B社では、そこで働くアルバイトから、契約社員、一般社員、マネジャー、役員まで、7,000名を超える人々が、いまを、つまり自分がここで仲間と共に働いていることを、自分自身の過去と未来から位置づけています。
自分がどこから来て、どこに向かいたいのか、自分自身の未来に向かうために、自分はいまどうありたいのか、いま、この場で、仲間たちと過ごし、挑戦することが、自分自身にとって意味あるものとして受け止められています。
その結果、働く仲間たちのほとんどが、最高のコミットメントで自らを成長させ、人々とお互いの成長を支援しあい、高い成果をあげようとしているのです。
はじまりは、2004年・・・
こうした状態を実現するまでの具体的な取り組みは2004年から始まりました。
最初の年である2004年は、エンゲージメントのコンセプトやメンタルモデルが、私たちの中に存在することを認識する年でした。
次の年の2005年は、ラインマネジャーの中に、自分も含めた仲間たちのエンゲージメントを高めることの価値を、実践を通して実感する人々と、いくつかの成功事例(エビデンス)を生み出す年でした。
そして3年目の2006年は、各事業部門の戦略的な方向性と置かれている状況に即して、事業部門オリジナルなエンゲージメントの推進プランを生み出し、実践する年でした。その結果、組織的なレベルでいくつかの成功事例(エビデンス)を得ることができ、加えて事業部内に戦略と状況に即したエンゲージメントを高めるプランニング能力と、推進するファシリテーション能力を獲得できました。
そして4年目の2007年と5年目の2008年は、すべてのマネジャーが自らのチームの戦略的方向性と固有の状況に即してエンゲージメントの推進プランを生み出し、マネジャー自身がファシリテーションを通年で行っていく年でした。
取り組みの結果・・・
その結果、上述のような働くほとんどの仲間が、現在を自らの過去と未来との関係から位置づけ、ありたい自分をめざしたチャレンジを生み出すことができたのです。
加えて、この取り組みで、個人の過去と未来は、仲間たちに共有されました。仲間たちは、お互いの個人的な未来像とありたい姿の実現に向けた協力的なかかわりあいを、フォーマル、インフォーマルにかかわらず行うようになりました。
B社で働くことは、最高の貢献感と適合感、そして仲間意識を持てる可能性に溢れた場になりました。
B社で働いた経験を持った人は、B社を辞めた後でも、「自分自身がどこから来てどこに行きたいのか、そのために現在自分はどうありたいのか、そしていまをどう生きるのかを探求し、日々を生きていく」という習慣を身につけ、次のチャレンジに向かって人生を送るようになりました。
そして、きっと、その人とかかわった人々にも、同じような枠組みで、日々を生きていく習慣が広がっていくことでしょう。
働く仲間たちはストックではなく、フローです。
人材の流動性が高まる中、共に過ごした期間、彼・彼女が持っているポテンシャルを最高に解放させ、最速のスピードで成長し、最大の成果をもたらし、たとえ退職してからでも、自分がここで過ごしたことに最高の価値を見出すことができる、こうした状態を恒常的に生み出す能力を組織として獲得することのほうが重要です。
この組織的能力を獲得した組織こそ、ハイエンゲージメント・オーガニゼーションと言えるでしょう。終身雇用が象徴するように、長く働くことを是とする日本の文化の中で、この困難な挑戦にB社は勝利したのです。