GROW THE PIE <訳者あとがき>
ヒューマンバリューでは、ロンドン大学ビジネススクールのアレックス・エドマンズ氏の著書『GROW THE PIE』の翻訳本を2023年7月に発刊します。本ページでは、訳者あとがきを先行公開し、同書の要点を訳者の視点から紹介するとともに、発刊への想いを共有しています。本書に関心をもっていただくきっかけとなれば幸いです。
分岐点に立つ世界と本書の意義
人類社会、そして地球環境を含む世界は今後どうなっていくのだろうか?
気候変動、資源の枯渇、貧困・格差、ジェンダー不平等など、顕在化する社会課題に対峙する中で、これまで当たり前とされていた前提や価値観が揺らぎ、先行きが見通せないことへの不安や恐れ、そうした原因の1つでもある経済活動への不信感が恒常的に高まっているように感じられる。
その一方で、人類社会や地球環境が持続的に存在し続けることを希求し、様々な経済活動を通してその実現に向けて取り組もうとする機運も高まっている。例えば、2019年8月に、米主要企業経営者で構成するビジネスラウンドテーブルが、それまでの株主第一主義を修正して「ステークホルダー資本主義」を宣言したことに代表されるように、「資本主義の修正」や「資本主義の再構築」などの言葉は連日、言論空間の中を飛び交っている。
日本政府も「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の中で、「社会的課題を解決する経済社会システムの構築を目指す」と記載するなど、地球環境の持続性や社会の持続的発展に資する経済を目指し、国際レベル、国家レベルで新たな制度の検討や整備が進められている。
国際会計基準(IFRS)財団は、2021年11月に国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)を発足させ、サステナビリティ等に関連する非財務情報の国際的な開示基準の策定を進めている。日本においても、2023年より有価証券報告書においてサステナビリティに関する企業の取り組みの開示が義務化されるなど、持続可能性に向けた企業の取り組みをより強く促す仕組みが構築されつつある。
企業レベルにおいても、多くの企業がパーパスを定めたり、統合報告書を発行したりするなど、持続 可能な社会の実現に向けて自社の存在意義を見直し、財務資本だけでなく自然資本や社会資本、人的資本などの非財務資本を幅広く考慮する経営への転換が広がりを見せている。
総体的に見れば我々は良い方向に進んでいるように思える。しかしその一方で、変化の渦中にあって、こうした変革への受け止め方は様々で、本当にこの方向に進んでいっていいのか半信半疑だったり、どうせ無理といった諦めに近い感覚をもつ人も数多く存在しているというのが現実ではないだろうか。
そうした疑念や、より良い世界の実現に向けたボトルネック、冷笑主義を払拭し、私たちが新たなパラダイムへ本気で進むための示唆と勇気を与えてくれるのが、本書『GROW THE PIE ~パーパスと利益の二項対立を超えて、持続可能な経済を実現する』である。本書の著者であるアレックス・エドマンズ氏は、ロンドン・ビジネス・スクールでファイナンスの教授を務め、公益を実現するためのビジネスの再構築の分野における第一人者である。本書でも示された、氏による膨大なリサーチに基づく論点は、私たちの経済の捉え方を変えてくれるものとして評価され、フィナンシャル・タイムズ紙の2020年のブック・オブ・ザ・イヤーに選出されている。本書を翻訳している2023年2月現在で、フランス、中国、韓国、トルコで出版されており、今後アラブ、ポルトガル、ロシアで翻訳が予定されているなど世界に広がりを見せている。
本書の中でエドマンズ氏は、「企業は利益のために経営されるべきなのか? それともパーパスのために経営されるべきなのか?」という問いに対して、これらはトレードオフの関係ではないという明確な指針を与えている。そして、「社会に価値を生み出すことを通してのみ利益を得るという企業経営・経済活動は実現可能である」ということを、豊富なデータや分析をもとに示し、「パイコノミクス」という考え方を提示した。本書を読むと、地球環境の持続性や社会の持続的発展のためには、こうした経済(パイコノミクス)への移行が急務であることが分かる。その上で、
⚫︎ 今あるパイを奪い合うという分断をもたらすメンタリティを脱却し、パイを共に育んでいくメンタリティへと発想を転換すること
⚫︎ 長期的視点に立って社会価値の創出を目指すという共通の基盤の上で、多様な立場の人が対話などを通して相互にエンゲージし合うこと
がこうした移行を可能にするために重要であると指摘し、企業経営者、資産家、投資家、顧客、従業員、市民がそれぞれに担う役割と意思決定の際の原則など、具体的な実践に向けた方策を事例を含めながら詳細に提示した。
パイコノミクスというコンセプトの提示とその有効性の検証を行うだけでなく、具体的な行動のイメージを提供し、内発的・主体的な変化を促そうとしている点が、本書の大きな価値と言える。
変革の課題と示唆
訳者が所属し、本書の発刊元であるヒューマンバリューは、長年、企業や自治体等と、人的価値・事業価値・社会価値を同時に高めていく組織の実現に向けた取り組みを協働してきたコンサルティング企業である。クライアント組織と関わる際の主な切り口は、企業のビジョンやパーパスの構築、組織文化の変革、リーダーシップ開発、人事制度やマネジメントシステムの改革などであり、ファイナンスの専門家でも経済の専門家でもない我々が、ファイナンスの教授が執筆した書籍を翻訳・出版するのはやや特異に映るかもしれない。しかし、日々、多様な組織に携わる者として、多くの日本企業がパーパス経営や人的資本経営の実践を模索する中で遭遇する構造的課題に真正面から向き合い、ヒントを与えてくれる同書の内容に強く共鳴するものがあり、今回の翻訳に至った。
それではここで、社会や企業の変革を実現する上で、私たちがどんな課題に直面するのかを、組織変革の現場における体験を交えて3つの観点から紹介し、本書の主題を振り返ってみたいと思う。
1 二項対立から統合思考へ
本書の原題のサブタイトルは、How Great Companies Deliver Both Purpose and Profit(偉大な会社はいかにパーパスと利益を両立させるのか)であるが、私たちは、「パーパスと利益の二項対立を超えて、持続可能な経済を実現する」と少し意訳を施し、二項対立という言葉をあえて用いた。その背景には多くの日本企業が変革に挑む中で、二項対立で行き詰まる様を見てきたことがある。
例えば、役員チームの変革を支援する中では、「パーパスを本気で実現しようと社会課題の解決などに奔走すれば、事業利益を犠牲にすることになり、持続的な発展や成長は望めないのではないか」という迷いの声をよく耳にする。「経済価値と社会価値それぞれに何%ずつの力を入れるのか」というように、両者が別物のように語られる場面も多い。
また、そうした経営陣の迷いが現場に伝わると、「長期的視点に立ったパーパスは掲げているものの、日常のビジネスにおいては短期的思考に基づくこれまでの諸習慣から脱却できず、パーパスの実現や持続可能な社会の実現は到底不可能ではないか」といった悩みや諦めが生まれやすくなる。
このような状況を放置しておくと、結果として組織全体に変革に対する揺り戻しが起き、せっかく掲げたパーパスが単なるお飾りになりかねない。こうした二律背反するマインドを組織的に統合していくことには長い時間と地道な努力が必要となるが、逼迫する地球環境や社会の課題を踏まえるとあまり悠長なことは言っていられない。本書は、こうした揺り戻し構造を乗り越えていくための後押しとなる。
では、どんな後押しがあっただろうか。後書きとして本書の代表的な論点をここで振り返ってみる。
1つは社会価値の創出が利益の創出につながること、つまり二項対立を超えていけることを「エビデンス」を基に示していることが挙げられる。特に本書の中では、「米国における最も働きがいのある会社トップ100」の企業の 年間の株式リターンが、比較群に対して年率平均2.3~3.8%のアウトパフォーマンスだったことや将来的に生み出した利益がアナリスト予想を上回ったという自身の研究内容を紹介し、社会的パフォーマンスが財務パフォーマンスにつながることに焦点が当てられていた。また、一般の書籍には通常掲載しないであろう、論文の査読プロセスも丁寧に紹介することで、バイアスや因果関係の錯誤を可能な限り排除していることが信頼度を高めている。エビデンスをベースに経営を行っていくことが強く求められる現代において、こうした根拠は変革に取り組む者を勇気づけると言える。
2点目は、意思決定の指針を原則として明らかにしていることが挙げられる。社会価値につながるような長期的な施策や新規事業には正解がなく、前例も少ないため、何を尺度に投資等の意思決定をしていくべきかについては、多くの会社が頭を悩ませているところでもあろう。そこに対して、エドマンズ氏は、リーダーが判断するための理論的根拠として、「増幅」「比較優位」「重要度(ビジネス的重要度と内発的重要度)」の3つの原則を示している。既存の短期的な財務尺度で計算を行うのではなく、こうした原則を基に自社のビジネスのポートフォリオや新規事業を捉えることで、進む道が見えてくると言える。こうした原則がすべて正しいわけではないかもしれないが、少なくとも不確実な未来に一歩を踏み出す羅針盤となり得るだろう。
3点目は、経済や財務の書籍の中でナラティブ(物語)の重要性を説いた意義が挙げられる。本書の大きなテーマに「パーパス」が挙げられるが、パーパスそのものは抽象的で曖昧なものとして受け取られることも多い。それを数字や定量的な尺度のみで表そうとしてもパーパスの意義は網羅できないし、途端に短期思考に陥り、「パーパスと数字は別物」というように現場では捉えられてしまうこともある。そこをつなぐのが、ナラティブ(物語)であり、本書はそこに価値を置き、実践のあり方を提示している。
ヒューマンバリューでは、組織変革の支援を行う際に、社会構成主義という理論・哲学を大切にしている。詳細な説明はここでは省くが、端的に言うと、「言葉によって世界が創られる」ということであり、組織の中でどんな会話や物語が流れるかによって、その組織の方向性が変わるということである。逆に言うと、言葉が語られないと世界は変わらない。ナラティブ(物語)を通して、私たちはどこへ向かうのか、そのために何を大切にし、何に取り組むのか、何を手放すのか、今目の前にある数字は自分にとってどんな意味があるのか、そして自身の想いと会社のパーパスはどうつながるのかといったことが組織内外で丁寧に語られ、意味づけられることによってはじめて、現場の一人ひとりがパーパスに取り組む意義を実感できるといえる。
日本で現在多くの企業が発行している統合報告書についても、そこに1つの意義がある。ディスクロージャー&IR総合研究所の「統合報告書発行状況調査2021」によると、2021年に統合報告書を発行した国内企業数は718社であり、情報開示の流れも受けて、今後もその数は増えていくだろう。しかし、その本質的な価値や役割が十分に果たされているとはまだ言えないかもしれない。IRや経営企画部といった一部の部署を除いて、普段自社の統合報告書に目を向ける社員も少ないであろう。統合報告書は、決してよそと比較してエンゲージメントスコアの高低をジャッジするためのものでも、外面の見栄えを良くするためのものでもない。自社のパーパスをどのように実現するのかをナラティブ(物語)として、社員を含めた多様なステークホルダーに開示し、物語を共創していく基盤となるものである。今後統合報告書の本質的な価値が広がることを願うとともに、私たちも本書を活用しながらそこを後押ししていきたいと思う。
以上、利益とパーパスの二項対立に関する本書の代表的な論点をおさらいしてみたが、ここに書かれていることを実践していくことで、二項対立を超えた統合思考を社会や企業の新しいコモンセンスにしていくことが、持続可能な社会づくりの大きな課題と言えるだろう。
2 分断から開かれた対話へ
組織の変革は、変革をさせる側・変革させられる側という構図を生み出しやすい。社会においても短絡的に誰かを悪者にすることで溜飲を下げるような事象も発生している。こうした分断は、変革を進める上での大きな障害となることが多い。
そうした中、エドマンズ氏は、見えない誰かを悪者にするのではなく、全員が主体者となってより良い社会づくりを目指すこととそのためのアプローチを本書の中で提言している。
特に投資家の役割と私たちとの関わりについて多くの章を割いている。これまでのステークホルダー資本主義の議論の中では、株主第一主義やその中心を担う投資家が糾弾され、投資家は持続可能な社会づくりの議論からは排斥の対象となりがちであったかもしれない。あたかも社会運動を志す人たちと新自由主義を謳歌する投資家が別世界の住人であるかのように。
しかし、そうではないということをエドマンズ氏は次のように指摘する。「投資家はしばしば、名前も顔もない資本家と表現される。しかし投資家とは、顔のない『彼ら』ではなく『我々自身』である。そこには子どもの学費のために貯金をする親、年金生活者のために資金を運用する年金制度、請求される保険金の財源を確保する保険会社なども含まれる」
私たちは、企業経営者、投資家、従業員、顧客、市民というようにカテゴリー名をつけて分類しがちであるが、一人の人格の中にも様々な顔がある。立場にかかわらず私という人間は、経営マインドをもった企業経営者でもあり得るし、自分の資産を何に使うかを判断する投資家でもあり、サービスを享受する顧客でもあり、当然ながら一人の市民でもある。
本書の主題である「パイコノミクス」というのは、それぞれの立場にレッテルを貼って、パイをどこに分配するかを奪い合ったり、誰かを責めて分断を起こすのではなく、すべての人がパイを享受する権利と、パイを育む責任を持っており、少し大げさに言うと人類全体でパイを育てていくことに向けた世界観や哲学の大転換を意味するものとして捉えられる。本書はその転換への道筋を示すものである。
そして、こうした哲学の転換には、多様な人々が「開かれた対話」を行っていくことが不可欠である。本書の中でも、企業、投資家、市民、顧客が対話を行い、ナラティブを共有していくことの重要性が述べられている。しかしながら、実際にはその難易度は高い。対話と一言で言っても、異なる背景や考え方を持つ人がただ集合しただけでは、違いのみが強調され、価値ある対話につながらないからだ。
そこで大切になってくるのが、本書のテーマとは少し外れるが、「対話型組織開発」の考え方になる。対話型の組織開発は、文字通り対話をベースにした組織開発の方法論であり、分断を生まずに変革を継続するアプローチとして、欧米では1980年代後半から1990年代にかけて多くの手法が開発された。日本においても2000年代から少しずつ企業経営や社会変革の取り組みに活用され、発展を見せてきた。ヒューマンバリューにおいても様々な手法を日本に紹介し、組織開発のプラクティショナーのコミュニティ形成に貢献してきた。また昨今では、精神療法の世界で使われていたオープン・ダイアローグの考え方やアプローチを生かした対話の場づくりも盛んに行われている。
パイコノミクスの文脈から考えても、今後こうした対話型の組織開発が果たす役割は大きくなると考えられる。こうした実践を通じてマルチ・ステークホルダーによる開かれた、越境した対話が当たり前のように行われていく状態を目指していきたい。
3 概念から行動・習慣へ
持続可能な社会を築いていくための概念やフレームワークは少しずつ整いつつあると言える。企業の中でもESG経営やSDGsなどの言葉を聞かない日はないくらい浸透してきている。しかし、私たちが変革の支援を行う中でも常々実感するのは、組織は概念だけでは変わらず、そこには行動が積み重なり、人々の習慣が変化することが必要であるということだ。
これは社会においても同様であろう。バラク・オバマ氏は、米国大統領退任の演説において、民主主義の危機を念頭に「合衆国憲法は素晴らしいがそれだけではただの文書で、そこに力や意味を与えるのは自分たち国民だ」と述べ、民主主義は一人ひとりの参画と努力なくしては成立し得ないと主張したが、持続可能な経済も、制度や規制などが整備されたからといって実現するわけではなく、一人ひとりの関与や行動が欠かせない。
本書の大きな価値は、パイコノミクスの概念を示しただけではなく、企業経営者、従業員、投資家、政策決定者、顧客、一般市民など、それぞれの立場から、自分に何ができるかを考えるためのアクションのアイテムや姿勢を具体的に示し、エンパワーメントを促したことにあるだろう。政策立案に直接携わらなくとも、有権者という役割を通して、政策にインパクトを与える、従業員や顧客の役割を通して、企業を選択し、企業の行動を変えるように圧力をかけられる。私たちは誰しもがインフルエンサーである。
そして、本書では、人々が受け身ではなく主体的に行動し、周囲に影響を及ぼす能力を「エージェンシー(行為主体性)」として紹介し、パイコノミクスを実践していくための源泉としている。この「エージェンシー(行為主体性)」については、本書の中で明記はされていないが、おそらくOECD(経済協力開発機構)での議論を踏まえていると推察される。OECDでは、2015年よりOECD Future of Education and Skills 2030を立ち上げ、VUCAと呼ばれる正解がない社会環境の中で、2030年に実現したい人材像を具体化してきているが、その中核の考え方に「エージェンシー」を置いている。その中でエージェンシーは、「変化を起こすために、自分で目標を設定し、振り返り、責任をもって行動する能力」と定義されているが、ここでいう目標とは、単に自分たちの欲求を実現し、自己満足的にキャリアを考えることではない。一人ひとりが属する社会に対して責任をもち、何が必要なのかを自ら考え、一歩を踏み出し、影響を与えていくという意味が含まれている。
今、日本で行われている人的資本経営の議論の中では、個々人の「リスキル」や「アップスキル」が大きく注目されている。もちろん社会環境の変化に適応していくために必要な課題ではあるが、何のためのリスキルやアップスキルであるかが重要である。それは一人のエージェンシーとして社会に対して価値を生み出していくためではなかろうか。表面的なスキル開発に走るだけではなく、一人ひとりが、社会や顧客への感受性や責任感を高めて、自身が何をなすべきかを考え、目的意識というコンパスをもちながら、仲間と共に行動を起こし、自らを振り返って着実に変化を生み出していけるような人材をいかに育んでいけるかが、今後の企業や社会の命題と言える。
積極的に善を為す世界へ
以上、ここまで本書を振り返りながら、持続可能な世界に向けた変革に企業や社会が挑む際に起きがちな課題とそれに対する示唆を紹介してきた。こうしたヒントを基に課題を乗り越えて、本書のもう1つの主題である「積極的に善を為す世界」へと向かっていきたい。
しかし、「積極的に善を為す」ことは、「害を為さない」ことと比べて、実行へのハードルは高い。見えない世界に踏み込んでいくため、失敗に対する恐れや不安も多いだろう。
それではそのための原動力は何であろうか? それはひとえに、本書でも触れられている「内発的な動機」にあるのではないだろうか。外圧からの変化や、人や社会を道具的に見て打算で取り組む変化は結局のところ長続きしない。内発的な動機だからこそ、困難も楽しみながら進んでいけるのである。
『イノベーションのジレンマ』の著者で、数年前に亡くなられたハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授は、生前に次のような言葉をハーバード・ビジネス・レビュー誌に寄稿した論文で引用していた。「外部の力で割れた卵は死を迎える。内部の力で割れた時、初めて命が誕生する。偉大なことは、常に内発的なものから始まる」
そう、偉大なものは内発的に生まれる。最初は小さな想いかもしれない。それを社会の公器や組織文化の温かな孵化環境を通じて、人の価値、事業の価値、社会の価値へと育んでいくことが、分岐点にある世界をより良い方向へ進ませる上での私たちヒューマンバリューのパーパスの1つであると捉えている。本書もその一助となることを願っている。