【Rethink -組織開発を再考する対話会 実施レポート】第2回:不確実性の時代にアプリシエイティブ・インクワイアリーが拓く可能性
【Rethink:組織開発を再考する対話会】の第2回目を、2023年6月6日(火)にオンラインで実施いたしました。第2回目のテーマは、「不確実性の時代にアプリシエイティブ・インクワイアリーが拓く可能性」でした。こちらでは、対話会当日の様子や参加者の皆さま同士の対話から生まれた気づきを実施レポートとしてご紹介できればと思います。
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ビジネス環境の変化や働く人々の多様化に伴い、組織開発のあり方が大きく変わろうとしています。2023年は、ヒューマンバリューでもこれまでの組織開発の価値を振り返りながら、現在私たちが直面している大きな変化の中で、あらためて組織開発のあり方を再考し、今後の進化の可能性を模索しています。
その一環として、多様な組織開発の実践家の皆さまと対話を通して探求を深める「組織開発を再考する対話会」を開催しております。3月に実施しました第1回目の対話会では、「エンプロイー・エクスペリエンスの視点から考える組織開発」と題して、組織開発を特別なイベントではなく、「日常の経験」としてデザインしていく方向性について探求しました。
第2回となる今回は、対話型の組織開発の代表的な手法であるアプリシエイティブ・インクワイアリー(Appreciative Inquiry:AI)に着目し、「不確実性の時代にアプリシエイティブ・インクワイアリーが拓く可能性」をテーマに、44名の方々にご参加いただきました。参加者の中には、すでに個人として、あるいは企業の人事として組織開発に取り組まれている方々に加えて、学校関係の方も複数名いらっしゃいました。このような多様な背景を持つ方々と、「人と組織の強みや可能性を解放していく手法の原理が、不確実性の高まる現在にどのような意義を持つのか」について共に探求しました。
対話会の流れと生まれたインサイト
本対話会では、事前にヒューマンバリューのホームページで公開した「不確実性の時代にアプリシエイティブ・インクワイアリーが拓く可能性」のレポート※を素材としながら、ヒューマンバリューから問いを投げかけ、小グループでの対話や全体共有を進めていきました。
*https://www.humanvalue.co.jp/wwd/research/insights/od/post_230426/
【1つ目の問い】アプリシエイティブ・インクワイアリーの本質を考える
-対話① 「人と組織の強みや価値を解放する」とはどういうことか? その本質的な意義とは?
まずはレポートの内容を踏まえながら、アプリシエイティブ・インクワイアリーの考え方やさまざまなテーマのもとに行われてきたこれまでの実践を振り返りました。アプリシエイティブ・インクワイアリーは、数ある組織開発の手法の中でも、特に人や組織の「強み」や「価値」にフォーカスを当て、「ありたい姿」を描くことで人と組織の可能性を最大限に解放していくアプローチを取ることが特徴として挙げられます。
上図にあるように、問題解決型のアプローチから、ポジティブ・アプローチへと変革の方法論をシフトさせたことにアプリシエイティブ・インクワイアリーの大きな意義があります。そこで、対話の場では、その原点に今一度立ち返り、同手法が活用され始めた当時よりもはるかに変化が激しく、不確実性の高いVUCAな時代の中で、「『人と組織の強みや価値を解放する』とはどういうことなのか」「その意味合いは今と昔で同じなのか」「本質的な意義とは何か」について、3~4名のグループに分かれて対話を行うことにしました。そこから以下のようなインサイトが生まれ、オンラインホワイトボードを使って共有し合いました。
さまざまな気づきが全体で共有されましたが、特に「個と全体の相互作用」という観点で話されている方が多いことが印象に残りました。「弱みも含めた相手の全体性を受け止め合えた上で、強みや価値があるのではないか。それが土台となって心理的安全性や信頼になるのではないか」、また「自分自身を知り、お互いを知り、組織を知ることから始まる」や「強みを理解することが、困難を乗り越えるためのエネルギーになる」といった気づきが共有されており、リモートワークに代表されるような労働環境の変化もある中で、あらためてお互いを知り合う大切さが共有されていたように感じられました。「組織の価値の最大化は、効率ではなく、そこに属する一人ひとりの居心地の良さ、所属感、幸福度、ウェルビーイングをどう高めていくかではないか」といった観点からの意見もあり、これからの組織の存在価値に対して、新たな視点が得られたように思います。
一方で、「人や組織の強みを解放する」ということは意外に難しく、慣れ親しんだ問題解決型アプローチへの揺り戻しが起きるので、個人や組織のマインドおよび組織力の醸成が大事になっていくのではないかという気づきも得られていました。
【2つ目の問い】不確実な時代におけるアプリシエイティブ・インクワイアリーの価値や可能性を再考する
-対話② 「不確実性がますます高まる現在において、AIの原則を適用したいテーマや領域、経験は何か?」「乗り越えていきたい『壁や障害』、獲得したい『組織的能力』は何か?」
次の対話では、不確実な時代において、アプリシエイティブ・インクワイアリーが持つ価値や可能性を考え直す時間となりました。そのきっかけとして、ヒューマンバリューから、4Dサイクルを繰り返すことで起きる人々の思考・行動様式の変化や、4Dサイクルに触れていくことで不確実性へのレジリエンスや柔軟性を高めることにつながる可能性、そして、いかに日常的に4Dサイクルをつくり出していくかついて情報提供を行いました。
その上で、2つ目の問いである「不確実性がますます高まる現在において、AIの原則を適用したいテーマや領域、経験は何か?」「乗り越えていきたい『壁や障害』、獲得したい『組織的能力』は何か?」をもとに、その可能性についてさらなる対話を通して探求しました。そして、得られた気づきをオンラインホワイトボードに記入し、全体で気づきや発見、今後の組織開発のレバレッジを収穫しました。
グループの対話では、さまざまな気づきや可能性が共有されましたが、総じてアプリシエイティブ・インクワイアリーは手法ではなく、生き方であるという認識が共有されているようでした。「仕事やプライベートに関係なく、生き方すべてにアプリシエイティブ・インクワイアリーを適用していきたい」といった声や、「儀式としてやろうとするのではなく、日常でプチ体験できる仕組みや考え方があるといいのではないか」といった問いから、「職場だけでなく、家族との会話から変えていくこと」「MBOや1on1、中期経営計画を作るときにも生かせそう。案件ごとに4Dサイクルを組み込むのもいいかもしれない」といったアイデアが生まれていました。中には「ゆるゆるAIひめくりカレンダー2024」といったユニークなアイデアもあり、多様な視点が混ざり合った豊かな対話の時間となりました。その上で、まだまだ組織の中には未来思考の会話に対する抵抗感も強く、これまで受けてきた教育から無意識に問題解決型に切り替わってしまうので、「練習」が必要であったり、「自分を安心してさらけ出せる場」をつくることや「対話」の機会を増やす必要があるといったことが再認識されました。
終わりに:全体を通しての感想・インサイト
最後に、チェックアウトとして、本日の感想や気づきをチャットで共有し、今回の対話会は終了となりました。今回も2時間という短い時間ではありましたが、組織開発の今とこれからについて、多様な実践家の皆さんと探求を深めることができました。最後に、今後の探求の視点として、参加者の皆さんからいただいたコメントを抜粋してご紹介します。アプリシエイティブ・インクワイアリーをテーマにした対話会ということもあってか、ポジティブなエネルギーの溢れるコメントを多くお寄せいただきました。
(コメント抜粋)
● 話したら楽しいな。ありがとうございました。
● 不確実な時代だからこそ、未来は圧倒的なスピードで創造できるポテンシャルが生まれているように感じます。
● あーーーーー楽しかったーーーー! 勇気出ました!
● AIアプローチに関心がある方々との対話は、やはり前向き、刺激的で楽しいと思いました。本日はありがとうございました!
● 自分がおぼろげに思っていたことが、他の人と話すことで形が見えてきた感じがします。ありがとうございました!
● あらためて、AIの原理に立ち帰ることが大切だなと思いました。ありがとうございました。
● 歩くAIになります^^
● あらためて「ポジティブな側面」にフォーカスすることの意味・価値を考えさせられました!
● 不安・不確実なことを受け入れる勇気と環境が大切だなと思いました!怖がらない!貴重な機会をありがとうございました。
● 「自分から解放する」を日常からしていこうと思います。ありがとうございました。
● 目の前にあることを、1つひとつ、ポジティブ・アプローチで積み重ねていきます。たくさんの気づきをありがとうございました。
● 本日はありがとうございました。正解を求めたがる、問題解決したがる、でもそういうことでは解決できない問題、どう解釈してどう自分なりに行動に繋げるか、周りと一緒に行動するか、みんなで日常的に探りながらやっていくことが大事。自分を知ること、周りを知ること(職場だけでなく家族も)をやっていきたいです。
● 心理的安全性はAIをし続けることで保たれていたことに気づきをいただきました。ありがとうございました。
● 初めての参加でしたが、価値観の似た方が見える気がしました。勉強になりましたし、力づけられ、少し安心できる憩いの場のように感じました。
● ありがとうございました。まずは社内で共感できる仲間を増やしたいと思いました。
● 皆さんとお話をする今日のこの時間でも、AIの4Dサイクルを歩んだ気がしました。ありがとうございました。
● 本日はありがとうございました。デジタルAIが進む中でさらに人としてあり方が問われる中でのAIは意義があるものとなっていくと思いました。
● ありがとうございました。多様性を認め合い、主体的に価値創造できるAIが大事だと思いました。価値創造企業のSECIモデルとも親和性が高いと感じました。
● AIをテーマにお話をすることで、この場の皆さんの強みや価値も実感でき、とても勇気が出ました。多様な人が共に生きていく世界で、あらためてAIはとても大切なフィロソフィーだと思いました。
以上、組織開発を再考する対話会第2回の様子をレポートしました。ヒューマンバリューでは、今後も対話を通して探求する場を継続して実施していきたいと思います。詳細は検討中ですが、以下のようなテーマについて、レポートの発信と対話会を予定しております。
<テーマ(※現時点での予定です)>
▷心理的安全性の側面から見るOST(オープン・スペース・テクノロジー)
▷ハイブリッドな時代において、知恵を創発するとは
〜ワールド・カフェの再考〜
▷統合思考とシステム思考
▷…etc.
また、組織開発の具体的な方法論について、より学びや探求を深め、実践につなげる機会として、今年度も下記のプラクティショナー養成コースを開催予定です。ご興味のある方はご覧ください。
『プラクティショナー養成コース』の概要はこちら
https://www.humanvalue.co.jp/wwd/practitoner/
『プラクティショナー養成コース』の開催日程一覧はこちら
https://www.humanvalue.co.jp/news/2022/12/2023/
これからも多様な組織開発の実践家の皆さまとともに、組織開発やカルチャーの変革、価値創造のあり方について、探求できればと思います。