学習する組織勉強会

学習する組織勉強会第1期レポート(5):システム思考

関連するキーワード

第5回ダイジェスト

※2009年12月~2010年5月に全6回で行われた第1期勉強会の取り組みをダイジェストで紹介しています。

第5回のテーマは「システムシンキング」でした。システムシンキングは、様々な要因のパターンの影響関係からなる構造を明らかにし、事象の全体像を把握する思考法です。要素還元的な思考の対極にある考え方です。学習する組織の5つのディシプリンのうち、このシステムシンキングは全てを統合するものと考えられており、特に重要なディシプリンと言えます。

冒頭では参加者から、「全体システムは複雑すぎて把握することはできないのではないか?」「時間遅れの概念を持つことが難しい」「自分たちが普段やっていることの多くは対症療法であり、未来への影響を考えられていないのではないか?」といった様々なシステムシンキングへの感想や疑問が共有されました。第5回では、こうしたポイントを念頭に置きながら、参加者みなで理論と実践の両方を体験しながら、探求を深めていきました。

情報提供を担当した川口からシステムシンキングの概要を紹介させていただいた後、実際にシステムシンキングの観点から探求を深めていくことにしました。その際、比較的簡単にシステムシンキングを深められる支援ツールとして、「原型トランプ」というものを活用しました。この原型トランプは、組織や社会に存在する構造的な課題を類型化したシステム原型について、トランプ感覚で学習を深めながら、理解を深めるツールです。このツールを使って、参加者同士で自分たちが置かれた課題についてのリアルな検討を行いました。参加者が共通で考えられるテーマとして、「人材育成や組織開発」に関して、現状陥っている構造的課題を「問題のすり替え」「成長の限界」といった原型を通して探求することで、課題に対する捉え方がシフトしてくるようでした。

その後、参加者でダイアログを行い、感想を共有しました。「システムシンキングとメンタルモデルの関係がみなと話し合うことでうっすらとつかめてきた」「システムシンキングが初めて腑に落ちた感じがあった」「システムは図を描いて終わりではなく、ここからが大切」といった様々な感想がシェアされました。組織開発の分野でも比較的敷居の高い感のあるシステムシンキングですが、決してそうではなく、自分のものの見方や捉え方を変えたり、周囲の人々を巻き込んでいくことで、何か違いを生み出せそうという感覚が多くの参加者の中に芽生えたことが印象的でした。

学習する組織勉強会第1期レポート(5):システム思考

私たちは人・組織・社会によりそいながらより良い社会を実現するための研究活動、人や企業文化の変革支援を行っています。

関連するレポート

次世代リーダーシップ創造に向けたシステム思考学習の可能性〜東京都立日比谷高等学校における実践から考える〜

2024.11.05インサイトレポート

株式会社ヒューマンバリュー 主任研究員 川口 大輔 システム思考は、複雑な問題の本質を理解し、長期的な視野から変革やイノベーションを生み出していく考え方であり、社会課題にあふれた現代に生きる私たちに必須の思考法です。 ヒューマンバリューでは、これまで長年にわたりビジネスパーソンに対してシステム思考を広げる取り組みを行い続けてきましたが、今回、東京都立日比谷高等学校の生徒19名に対して、システム

コラム:ピープル・センタードの人事・経営に向き合う5つの「問い」

2022.10.28インサイトレポート

株式会社ヒューマンバリュー 取締役主任研究員 川口 大輔 「人」を中心に置いた経営へのシフトが加速しています。パーパス経営、人的資本経営、人的情報開示、ESG経営、エンゲージメント、ウェルビーイング、D&I、リスキリングなど様々なキーワードが飛び交う中、こうした動きを一過性のブームやトレンドではなく、本質的な取り組みや価値の創出につなげていくために、私たちは何を大切にしていく必要がある

自律分散型組織で求められる個人のマインドセット変容

2022.10.19インサイトレポート

株式会社ヒューマンバリュー 会長高間邦男 今日、企業がイノベーションを行っていくには、メンバーの自律性と創造性の発揮が必要だと言われています。それを実現するために、先進的な取り組みを行う企業の中には、組織の構造を従来の管理統制型のピラミッド組織から自律分散型組織に変えていこうという試みをしているところがあります。それを実現する方法としては、組織の文化や思想を変革していくことが求められます

組織にアジャイルを獲得する〜今、求められるエージェンシー〜

2022.01.20インサイトレポート

プロセス・ガーデナー 高橋尚子 激変する外部環境の中で、SDGsへの対応、イノベーション、生産性の向上などの山積するテーマを推進していくには、組織のメンバーの自律的取り組みが欠かせません。そういった背景から、メンバーの主体性を高めるにはどうしたら良いのかといった声がよく聞かれます。この課題に対し、最近、社会学や哲学、教育の分野で取り上げられている「エージェンシー」という概念が、取り組みを検討

アジャイル組織開発とは何か

2021.10.25インサイトレポート

株式会社ヒューマンバリュー 会長 高間邦男 ソフトウエア開発の手法として実績をあげてきたアジャイルの考え方は、一般の企業組織にも適応可能で高い成果を期待できるところから、最近では企業内の様々なプロジェクトにアジャイルを取り入れる試みが見られるようになってきました。また、いくつかの企業では企業全体をアジャイル組織に変革させるという取り組みが始まっています。本稿ではこういったアジャイルな振る舞いを

<HCIバーチャル・カンファレンス2021:Create a Culture of Feedback and Performance参加報告> 〜「フィードバック」を軸としたパフォーマンス向上の取り組み〜

2021.10.01インサイトレポート

2021年 6月 30日に、HCIバーチャル・カンファレンス「Create a Culture of Feedback and Performance(フィードバックとパフォーマンスのカルチャーを築く)」が開催されました。

コラム:『会話からはじまるキャリア開発』あとがき

2021.08.27インサイトレポート

ヒューマンバリューでは、2020年8月に『会話からはじまるキャリア開発』を発刊しました。本コラムは、訳者として制作に関わった私(佐野)が、発刊後の様々な方との対話や探求、そして読書会の実施を通して気づいたこと、感じたことなどを言語化し、本書の「あとがき」として、共有してみたいと思います。

ラーニング・ジャーニーが広げる学びの可能性〜『今まさに現れようとしている未来』から学ぶ10のインサイト〜

2021.07.29インサイトレポート

過去に正しいと思われていたビジネスモデルや価値観が揺らぎ、変容している現在、「今世界で起きていることへの感度を高め、保持し続けてきたものの見方・枠組みを手放し、変化の兆しが自分たちにどんな意味をもつのかを問い続け、未来への洞察を得る」ことの重要性が認識されるようになっています。 そうした要請に対して、企業で働く人々が越境して学ぶ「ラーニング・ジャーニー」が高い効果を生み出すことが、企業の現場で認

不確実な時代において、なぜ自律分散型組織が効果的なのか?

2021.07.19インサイトレポート

自律分散型組織については、1990年初頭に登場した「学習する組織」の中で、その必要性や有用性が語られて以降、変革の機運が高まり、様々なプラクティスが生まれてきました。一方、多くの企業は未だに中央集権的なマネジメント構造に基づいた組織運営から脱却することの難しさに直面しているものと思います。しかしながら、COVID-19の世界的なパンデミックをはじめ、社会的な文脈が大きく変わっていく流れの中で、これ

自律分散型の文化を育む上での阻害要因に向き合う

2020.10.07インサイトレポート

いま多くの組織がアジャイルな振る舞いを組織に取り入れ、自律分散型組織を育んでいくことを求めるようになっています。ヒューマンバリューでは、2018年より計画統制型の組織構造の中にアジャイルな振る舞いを取り入れていく、チームマネジメント手法「チームステアリング」を開発してきました。​今回は、計画統制型組織において自立分散型組織の振る舞いを導入しようとした際に起きがちな阻害要因と、阻害要因に向き合いなが

もっと見る