学習のあり方が「カンパニー・センタード」から「ラーナー・センタード」にパラダイムシフトしている中、多くの企業が自社の人材開発体系を見直そうとしています。ヒューマンバリューは職場にラーニング・カルチャーを醸成しながら、人材開発体系のリ・デザインを支援しています。
グロース・ マインドセットの醸成
変化が激しく、先が見通せない現在において、働く一人ひとりのマインドセット(思考・行動様式、信念)の違いによって、生み出される成果や成長度合い、そして働く人々の幸福感は大きく変わってきます。ヒューマンバリューでは、個人と組織のグロース・マインドセットの醸成を多面的にサポートしています。
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グロース・マインドセットへの関心の高まり
近年、企業がタレント開発に取り組む上で、「グロース・マインドセット」を育むことの重要性が注目されています。
将来の不確実性や複雑性が高い今日において、働く人々は、失敗や評価を恐れ、チャレンジを避けたり、成長にブレーキをかけてしまう「フィックスト・マインドセット」になりがちです。しかし、フィックスト・マインドセットが組織内に根強くあると、変化に適応し、新たな価値を生み出していくことができません。
そこで、「自分の能力は伸ばせる」という考え方に基づき、自らストレッチなゴールを掲げ、失敗を恐れず、難しい問題にもチャレンジし、そこから学ぶことができるグロース・マインドセットを、社員一人ひとりの中に意識的に育んでいくことを、企業の人材ビジョンや第一の戦略に掲げている企業が増えているといえます。
グロース・マインドセット
グロース・マインドセット(Growth Mindset)とは、「人間の基本的資質は努力しだいで伸ばすことができる」という信念・心のあり方のことを指します。マインドセット研究の第一人者であるスタンフォード大学心理学教授キャロル・S・ドゥエック氏によって提唱された概念で、近年、マインドセットに関するさまざまな研究が分野を超えて行われ、注目を集めています。
グロース・マインドセットを育む
しかし、グロース・マインドセットを育むことは、簡単なことではありません。なぜなら、人間のマインドセットはそれまでの人生の中で積み上げてきた思考・行動様式、信念であり、一朝一夕に変えられるものではないからです。また、マインドセットの違いを生み出すのは、個人だけにその要因があるのではなく、共に働く仲間の存在や上司・部下との関係、また組織の文化や制度・仕組みといったものにも大きな影響を受けることがわかっています。
そのような特質を踏まえた上で、ヒューマンバリューでは、一時的なイベント・研修ではなく、下記のような多様な側面から、粘り強くグロース・マインドセットを育んでいくプロセスをサポートしています。
個人への働きかけ
ヒューマンバリューでは、心理学、認知行動科学、脳科学等の知見を活用し、働く一人ひとりが自分の認知や行動の様式を変容していくことをサポートしています。
たとえば、ある一定期間、集中してグロース・マインドセットを育むアクションラーニングを提供することは、認知・行動変容が生まれやすく効果的です。
アクションラーニングの中では、グロース・マインドセットの概念や考え方を学ぶとともに、本人が心から願うありたい姿(インサイドアウトの目標)を描き、その実現に向けた様々な「実験」を自らのフィールドで行いながら、望ましい「習慣」を獲得していきます。こうしたプロセスを丁寧にサポートしていくことで、確実なマインドセットの変容につなげていきます。
こうしたアプローチは、対象者は特に限定されません。内定者から新入社員、若手から中堅、管理職やシニア・ベテラン社員など、幅広い層の変容を支えます。
<主な取り組みの例>
・グロース・マインドセットを育む「Living Vision」プログラムの展開
・3年次研修:成長を加速させるアクション・ラーニング
・グロース・マインドセットにフォーカスした「リーダーシップ開発」の展開
・…etc
マネジャーへの働きかけ
成長や学習は、日々の職場における体験によって大きく促進されるものです。職場における、上司と部下の関係性や会話のあり方も、マインドセットに大きな影響を与える要因となります。たとえば、上司が部下を「フィックスト・マインドセット」の目線で見て、「このメンバーは何を言っても育たないな」といったマインドで接したり、コミュニケーションを取っていると、メンバーはますます「フィックスト・マインドセット」を強化してしまいます。
大切なのは、上司がメンバーに対して「グロース・マインドセット」の目線をもち、小さな変化や価値、成長を共に育てていけるような関係性や会話のあり方を築いていくことです。
単に会話のテクニックやノウハウを学ぶのではなく、その背景にある哲学(フィロソフィー)についての理解も深め、マネジメントの質を高めることが重要です。
ヒューマンバリューでは、管理職・マネジャーがグロース・マインドセットについて学ぶ機会を提供し、メンバー自らがグロース・マインドセットを育んでいくためのマネジメントのあり方について実践的に習得していくことをサポートしています。
<主な取り組み例>
・グロース・マインドセットを育む「ピープル・リーダー」の育成
・評価者研修における「グロース・マインドセット」の適用
・管理職に向けた「グロース・マインドセット」の情報提供(研修・ワークショップ)
・グロース・マインドセットを育むカンバセーションの向上サポート
・…etc
チーム・組織への働きかけ
グロース・マインドセットには、職場における周囲との関係性が大きく影響を与えることがわかっています。職場に心理的安全(サイコロジカル・セイフティー)があり、リスクを取ってチャレンジしたり、本音で話ができる豊かな関係性があると、自然とグロース・マインドセットが育まれていきます。逆に、職場が恐れや不安で満ち溢れていると、フィックスト・マインドセットが助長されてしまいます。
そこで、グロース・マインドセットを育むには、「チーム・組織」に働きかけることが大きな効果につながります。ヒューマンバリューでは、チームや組織単位で自律的なミーティングを開催し、心理的安全を仲間同士で高め、グロース・マインドセットを育むことを目的とした取り組み(未来共創ミーティング)のサポートを行っています。こうした取り組みにより、グロース・マインドセットを一部の人だけでなく、組織的に広げたり、面的な展開を行うことを可能にしています。
<主な取り組み例>
・「未来共創ミーティング」の組織的展開サポート
・グロース・マインドセットを育む「共有ビジョン」創造
・…etc
制度・仕組みへの働きかけ
人々のマインドセットは、無意識のうちに多くのものから影響を受けて形成されています。どれだけ個人や集団がグロース・マインドセットを育んだとしても、既存の制度や仕組みが社員の成長を促進するものでなければ、育まれたマインドセットも自ずと元の状態に戻りやすくなるかもしれません。
現実的には、現在多くの企業で採用されている人事・人材開発・パフォーマンス・マネジメントの制度・仕組みが、フィックスト・マインドセットを助長するようなものになってしまっているため、そこを再構成していくことが求められます。
そこで、ヒューマンバリューでは、実現したい世界観や組織文化、企業の哲学といったものと一貫性を図りながら、グロース・マインドセットが育まれる社員のコミュニケーションプロセスを確立するために、制度や仕組みといったハード面の再構築支援も行っています。
<主な取り組み例>
・グロース・マインドセットを指向した「パフォーマンス・マネジメント革新」
・人事評価制度の再構築
・…etc
関連する取り組み
タレント開発
ラーナー・センタードな人材開発体系の見直し・構築支援
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シニア・ベテラン社員のタレント開発
職場の高齢化が進む中、シニア・ベテラン社員のタレント開発やキャリア開発の促進が企業の大きなテーマになってきています。ヒューマンバリューでは、「内的キャリア」と「グロース・マインドセット」という2つの軸に基づいて、シニア・ベテラン社員がより良く生き、未来を切り拓いていけるサポートを行っています。
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キャリア開発支援
VUCAワールドと呼ばれる、変化が激しく、不確実性の高い環境は、私たちの働き方やキャリアのあり方にも影響を及ぼしています。ヒューマンバリューでは、そうした変化の時代に、一人ひとりが自分の軸をもって主体的に自分らしいキャリアを切り拓いていくプロセスをサポートしています。
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