コラム

パフォーマンス・マネジメント革新が求められる背景

2015年の段階で、フォーチュン500の企業の10%が年1回の評価・レイティングを廃止しており、2017年までには、50%が廃止すると予想されています。 「なぜパフォーマンス・マネジメントの革新が求められるのか?」について、VUCA(不安定性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代における、マネジメントの変化の観点からパフォーマンス・マネジメント革新が求められる背景を考察しました。

不安定性・不確実性・複雑性・曖昧性が高まっているのが、今のビジネス環境です。このVUCAの時代である今、ビジネスに関わるトレンドも変化しています。
以前は静的環境―変化があまり激しくない、もしくは変化があったとしても一直線上の想定内の変化が起きていた―そういう時代から、今は動的環境であり、不安定性とか不確実性が高まるような環境に置かれています。

また、クローズシステムだった時代には、限られた範囲の中で、効率性を高め、コントロールすることで価値の最大化を図ることが大切でした。たとえば、企業の目標を組織や個人に割り当て、それぞれがその達成に向けて、最適化を目指して取り組むことが求められていました。

現在は、オープンシステムでビジネスの影響範囲は広がっており、限られた範囲の中で最適化を求めるには限界があります。そこでは、カスケードされた目標を個人として達成するのではなく、状況変化に合わせた自律的行動が求められますし、また個人ではなく、コラボレーション、創発の中から価値を生み出すことが大切になってきています。

そうした変化の中では、人に求められるものも変わってきます。

こちらは、ゲーリーハメルの『経営は何をすべきか』(ダイヤモンド社, 2013年)で提示している人間に求められるもののレベルです。動的環境になり、オープンシステムになると、人間には、限られた範囲の中での勤勉さや専門性(レベル1からレベル3)だけではなく、主体性、創造性、情熱(レベル4からレベル6)がより求められるようになります。また、経営や人事の視点から捉えれば、主体性・創造性・情熱をより多くの社員が発揮できること、そして阻害する要因を取り除くようなマネジメントやビジネスプロセスをつくっていくことが重要となってきています。

「人・人・人」の時代と書いていますが

――対比するからこそ、あらためて人が生み出せる価値というのはどういうことなのかということが大切な時代になってきています。これまでの時代は、経営資源として人・物・金といったことがいわれていましたが、これからの時代は、AIが進化し、動的環境になり、創発や自律、主体性という人間だけがもっているものが重要になります。

つまり、創造者としての「人」、イノベーターとしての「人」、世界をより良いものにする「人」に焦点を当てることが大切になってきています。
そしてそれらの「人」は外発的な動機づけでは現れません。したがって、人材マネジメントのあり方というのも変わってきます。報酬における外発的動機づけだけでは動きづらくなり、本人の内側に根差した内発的動機づけが求められています。そういう時代にシフトしてきているのです。

ダニエル・ピンクの『モチベーション3.0』(講談社, 2010年)やアルフィ・コーンの『報酬主義をこえて』(法政大学出版局, 2011年)という本でも、報酬による外発的動機づけの時代から、内発的動機づけが大切になっていることが、科学的な根拠を伴って示されています。

なぜパフォーマンス・マネジメントの革新が求められるのか?

あらためて整理すると、これまでの時代は、静的環境の中で、限られた範囲の中での最適化・効率化を目指して管理・コントロールする、そのために外発的動機づけをするという時代でした。
そして現在は、動的環境のオープンシステムの中で、より自律性・主体性が求められて創発を起こしていく、その中で内発的動機づけも求められるという時代に変わっており、これからはさらにそれが強くなるのでしょう。

したがって、既存のパフォーマンス・マネジメントは、今のこの時代の中でなかなか効果を発揮しづらくなっていて、今とこれからの時代に合ったパフォーマンス・マネジメントへと革新していく必要に迫られている、そういう経緯から起きていると考えられます。

この記事は、2016年3月18日『パフォーマンス・マネジメント革新フォーラム』における(株)ヒューマンバリュー 代表取締役副社長 阿諏訪博一の講演部分から、パフォーマンス・マネジメント革新が必要とされている時代的な背景について整理した内容になります。

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